幻愛夜想曲
7
「ただいま」
部屋の鍵を開け、中に入るとしんとしている。
一人暮らしにも大分慣れたが、やはり習慣というものは簡単にはなくせない。
(もう一年、か…)
静かな空間に身を沈めると、どうしても心にぽっかりと穴が空いたような気持ちになってしまう。
寂しい気持ちを紛らわそうと携帯を手に取れば、メールが数件来ていた。
(先輩たちからだ)
それも珍しく全員から。
(えっと、<変態には気をつけろよ>?…って霧夜先輩のことだよね?
<モテる女の子は辛いわねぇ>…沙紀先輩の方が絶対美人なのに…
<今日も可愛かったよ>……。
<大変だな、頑張れよ>ああ、玲先輩だけが味方です…)
読み終えると不思議と心が暖かくなる。
(今こうして楽しく過ごせるのは、この面白くて優しい先輩たちのおかげなんだなぁ)
それを改めて実感させられた。
(あ、そういえば!)
不意に冷蔵庫の中が寂しいことを思い出す。
買い物にいこう、思い立つとすぐに支度を始めた。
.
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!