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企画提出 岳+光
冒険の旅から何年か経ったある日、タケルくんから僕のパソコンのデジタルワールドで集めたデータをコピーして送ってほしいとメールで頼まれた。
まとめたままあまり手を付けていなかったので有効活用してもらえるなら、と膨大すぎるデータをまとめていると電話がかかってきた。
「はい、泉です。」
「あ、光子郎さんですか、僕、タケルです。」
「タケルくんでしたか、どうしました?」
電話の主の穏やかな声に破顔し、パソコンを弄る手を止め、続きを促した。
「あの、データのことで…お返事が聞きたくて…」
そうだ、返事を忘れていた。急いで了承の旨を伝え、ついでに気になっていた事を聞いてみた。
「そのデータ、何に使うんですか?タケルくんのことですから悪いようにはならないとは思っていますが」
一瞬、間が生まれた。
何やら緊張しているような気配が伝わる。そんなにいけないことを聞いてしまっただろうか。
「…兄さんや、太一さんたちには言わないでください」
「は、はい」
息を呑むのが電話越しに伝わってきた。
僕自身も緊張しているのかお茶を持ってきたテントモンが不思議そうな顔をしている。
「ぼく、本を書いてるんです。」
「はい?」
肩透かしをくらった気がして思わずその場に座り込んでしまった。
「あ、い、いえ、ただの本じゃ、なくてデジタルワールドでの、冒険で、体験したこと全部をまとめたものです。」
一人でつくりあげようと思ったけれど、情報が足りなかった、みんなにサプライズとして完成本を渡したかったがあの出来事を細かく記録していたのは自分以外にはおそらく光子郎しかいないと思った、と話してくれた。
「タケルくんらしいですね。」
みんなを喜ばせようと、影で頑張る様子は幼いころから何一つ変わっていない。この子ならこのデータを有効活用してくれる。
「ありがとうございます、話してくれて。あなたになら安心してデータを渡すことができます。」
「こちらこそありがとうございます、あ、発行日は八月一日の予定です。」
そっと受話器を置いて作業を再開する。
「光子郎はん、えらい嬉しそうでんな」
「あぁ、嬉しいよ。」
誰にも教えてはいけない。いつかの八月一日へのサプライズなのだから。
end
私にとっても八月一日は特別な日です。
ありがとうございました。そして、すみませんでした。ペシェ
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