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盤上破乱
第肆頁



 修羅はいつのまにか鬼兵城の目の前に来ていた。


 何のためらいもなく破壊された木の門をくぐり抜けた。


 ふと、鉄の臭いが鼻を突いた。


 修羅にとっては懐かしいにおいといっていいほどの臭い。


 鉄ではないことくらい分かった。


 冷たく重い錆び気味の鉄の扉を修羅は片手で普通に開けた。(馬鹿力って言う奴?)


 錆びた五月蠅い擦れ音が奧に広がっている部屋に響いた。


 鉄の臭いがどっと流れ込んでくる。


 尋常ではない濃さ。


「40人ほどですかね。」


 修羅はそう呟いて戸を閉めた。


 うるさい音がまた五月蠅く響いた。


 修羅の視界は真っ暗であるが、足下は嫌に紅黒く浮いて見えた。


 所々の白も嫌に目立つ。


 修羅は手探りでぬれている壁の中から電気のスイッチを捜して押した。


 弱い光がうなりながら部屋を照らした。


 修羅の視界は修羅場だった。


 床一面に肉と血と骨と内臓の残骸が異常に散乱している。


 鉄の臭いと並んで腐臭が漂っている。


 この肉と内蔵と骨の塊をつい一時間前は人間と思っていたのである。


「全滅ですか。」


 肉と肉の間にはみ出ている黒い布を見て修羅は言った。


「同じですよね。あの頃と。」


 修羅は誰もいない空間に言った。


 しかしその瞳は一点に何処かを見ていた。


 すると、血みどろの派手な着物が柱の物陰から出てきた。


「久しぶりじゃねぇか。」


 そいつは言った。


 右目を包帯で隠している

































 高杉














 此処は修羅場


 あるのはもと人間だった物体達。


 その中二人の子供が光の反射しない人骨でできた刀を持って立っていた。


「全部…壊れちゃった。」


 あきらめたような笑いを零し、修羅の幼少期であろう子供が言った。


「まさかお前が母親を殺すとは…思わなかったけどな。」


 幼少期の高杉も微妙に笑っていた。


 紅く染色された一面にその会話は良く映えた。


「これであの子も忘れられる。」


 あの子


 その存在のために二人は自分の生まれ育った里を殺したのだ。


 ざっと


 二千三千


「あの子は…許してくれるかな。」


「許す前に…忘れて欲しいんじゃねぇのか。」


 黒いフード付きのマントを被っている修羅はふと俯いた。


「君たち。」


 里の門をこともあろうに男が二人通り抜けてきた。


 二人とも骨の刀を構えた。


 長い髪の男と派手な着物を着た薬屋の男は警戒心を流して近づいてきた。


「ここは 華の郷『だった』 ようですね。」


 笑っているのか無表情なのか分からない薬売りの男は言った。


 珍しい話し方だった。


 その後、子供である二人は二人の男に引き取られた。


 高杉は吉田 松陽という学舎の先生に。


 修羅は薬売りの男に引き取られた。


「なぁ。」


 高杉が修羅に言う。


 反対方向に行く修羅は振り向いた。


「もしお前が…。」


 質問の途中で高杉は言う必要のなくなったのか途中で言葉を切った。


 修羅は口元をあげる。


 そして


「「                。」」


















.



「修羅。あの時の約束は覚えているかぁ?」


「ええまぁ。」


 修羅は刀を引き抜いた。


 いつの間にか周りには人相の悪い攘夷志士が集まってギラギラと刀を向けてきていた。


 すると


 ドアを破壊する大きな爆発音が部屋の空気を破壊した。


ご用改めである!!神妙にとーつげきだぁぁ!!


 土方の言葉が聞こえなかったのかわざとなのか(たぶん後者)沖田が言葉の途中で突撃命令を出す。


 どこまでも自分を見失わない人だなオイ。


「おーきたー!!てめぇは地獄にでも突撃しやがれぇぇ!!」


 爆発に巻き込まれていた(沖田の陰謀により)土方が攘夷志士を斬りながら沖田に言う。


「あり?土方さん生きてたんですかぃ。しぶとい奴でさぁ。」


「わるかったな!!」


 つーか何やったんだ沖田。


「修羅〜!!おるか?!」


 圭も攘夷志士を切り刻みながら叫ぶ。


「亮翼がさみしそうになななななんなん?!なってねぇぇぇぇえ!!」


 つーかいつからそんなに亮翼君は可愛くなったのかな?!


 ちゃっかり(つーかばりばり)聞こえていた修羅はものすごい怪しい不審者をみる目つきで見ていた。


 …あんたは人の気持ちを読んで表情に表しなさい…;;;


「幸せな奴だなぁ?」


 刀を合わせながら高杉が言う。


 攘夷志士が圧倒されていることには興味がないようだ。


「あれが


 僕の


 居場所


 ですかね。」


 修羅はそう小さく言うと、はっとなった。


 亮翼がサングラスをかけたチャラ男と斬り合いをしていた。


 三人の中では力がないものの、亮翼は腕が立つ。


 しかし、押されているようだった。


「あいつ死ぬなぁ。万歳だからなぁ?」


 口元をつり上げた高杉が言う。


「お前の居場所があったとしても俺の居場所は…」


 高杉の視界にノイズのように松陽先生がちらほらする。


この世界がつぶしやがった!!ならお前もそうなったっておかしくはないだろう?」


(ならば人間から…ですか。)


 瞬間、修羅の空気が真空状態のように無音になった。


 修羅がこうなったときは何かをはっきり決めたときだっだ。


「なっ?」


 修羅は刀を持ち替えて万歳という男に思いっきり投げた。


 その刀は一直線に、速攻に万歳の利き腕に突き刺さった。


 驚きと痛みの叫びが修羅の鼓膜に響いた。


「馬鹿か。」


 高杉は気にしないように視線をずらし、修羅を斬った。


 表面だというものの、左胸板から肩に掛けて一筋の紅い切り傷ができた。


 血があふれ出す。


 修羅は













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あきゅろす。
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