師匠と弟子



.師匠と弟子.



45度に払った剣先は何も捕らえることなく宙を掻く、分かっていたから動揺は何もしなかった。そのままの流れで身体を回転させるように左手を添えてもう一度振りかぶる。

よけられるか、受け止められるか。

どちらにせよ次の行動は決まっていた。相手の出方を待ってから動いたのでは遅すぎるのだ。実力の差は悲しいかな歴然、一瞬の何かで敗北が決まる。
ならばどちらの行動をされても次に出すものは同じ。
次の瞬間剣先は地に埋まった。

(避けたか)

受け止められのなら地に着く前に相手の手に阻まれる。
地面に届いたのなら避けられたということだ。
右か左か上か後ろか、何処に避けられたのか確認する必要は無い。もとより確認していたら手遅れだ。

シェゾは両手で握った剣に吼える。
片手で持てる剣をわざわざ両手で振りかぶったのはこのためだ。
左手には既に魔導力を集中させてある。本来利き手を基準にしないと魔導の制御は困難だから剣と魔導両方使える者がいても、同時に発動することはしない。

だが、シェゾは違った。

右で剣を扱いながら、同時に左で魔導力を練る。
人並みはずれた集中力と、経験、そして両の手どちらでも魔導制御が出来るシェゾだからこそ出来る芸当だった。

「シャドウエッジ!」

結果、左で練った魔導力を剣の攻撃の後に間髪いれずに繰り出すことが出来る。
シェゾの咆哮と共に、左手から放たれたそれは、地に刺した闇の剣を媒体としてシェゾの足元に円状に広がる。
暗紫色の魔法陣が発光したのは一瞬。
直後、地面から無数の、闇が生えた。

地面から生えた闇の刃はまっすぐに上空を目指す。
敵が右だろうが左だろうが後ろだろうが上だろうが、距離をとって遠距離攻撃をしてこようが関係ない。自分の周り全てに攻撃を仕掛ければいいのだから。
間にある障害物は全て闇の刃が一薙ぎにする。
本来は発動を定めた直径1m程の範囲に地面から闇の刃を発生させて、相手を攻撃する攻撃専門の魔導。だが、闇の剣を媒体にし、シェゾの桁外れの魔導力とを持ってすれば、自分を中心とした半径3m程度への、攻撃と防御両方の役割をもった一撃になる。

だが、それでも、その攻撃により生まれる余裕は一瞬だ。
相手はさらにその上を行く。
当たったにしろ当たっていないにしろ致命傷なわけはないのだから、シェゾはすぐさまその場を離れる。

直後、先ほどまでシェゾの立っていた地面が弾けた。
攻撃の入った角度、それから気配と直感で視線を送った先に、やはり相手は立っていた。
そいつは先ほどのシェゾの魔導の範囲を見送って嘆息をする。

「攻撃が、大振り過ぎだ」
「悪いか」
「今までなら問題は無かったろうが、これからはそうはいかない」

お前には確実に私を殺せるようになってもらわなければ困るのだ。
そう言って相手は一度だけ小さく、冷たい瞳を細めると、胸のポケットから眼鏡を取り出す。それがこの戦いの終わりの合図。
それはこの一連の激しいやりとりの渦中にあったにもかかわらず、傷1つついていなかった。その様にシェゾが小さく舌を打ち、それから右手を払うと大人しくその先の闇の剣を収める。

「…お前の癖が分かった。少し、話をしようか」

それを見送った相手がそう言って、パチンと指を鳴らしてからその取り出した眼鏡をつけると、張り詰めていた空気が霧散した。

分厚い眼鏡の底に優しい光をともしながらアスモデウスはシェゾに微笑んだ。

−−−−−−−−

−−−−−−−−
日記ログ
アスモデウシェ。
サタシェにしようと思っていたのに気付いたらデウシェになっていたのでぅす。
こいつらは完全に師匠と弟子でぅすよね。萌えますっていうか燃えますよね。
デウシェはぁはぁ。なんで続かなかったんだろうな真魔導…!!あの後に続いただろうデウシェの師弟的展開がすげぇ気になって気になってしかたがない。



第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!