「ラグナス」 中庭でふわりと、風が流れるように話しかけられて彼は振り向いた。漆黒の髪にやや野性的だがそれでいて優しい顔立ち。ラグナスは呼ばれた相手の元に素早く駆け寄ると、その前で膝をついた。 「どうなさいました、姫」 「もう…私はその呼びは嫌いだと、」 「しかし、私は貴方の騎士で、」 「……大丈夫、今此処には“ぼく”たちしかいないよ」 上から降ってきた悪戯っぽい声に顔をあげる。彼女は小首を傾げて水色のドレスを翻すと中庭の椅子に腰かけた。 揺れた栗色の毛、可愛らしく微笑んだ姫は、ラグナスの幼なじみであり彼が使える主人、ナジャ国の姫である。 彼女が使った言葉にラグナスは顔を綻ばせてその前に立ち上がると軽いため息と共にその頭を撫でた。 「ぼくなんて言ってるとまた陛下に怒られるぞ、アルル」 「いいじゃないか、君たちと一緒の時くらい」 「ですが…」 「敬語」 ラグナスとアルルは幼なじみだが騎士と姫である。その立場をわきまえてラグナスが敬語を使うと、アルルが口を尖らせた。 この姫は素直で身分などに気を使わない気質がある。城下の者ともよく接するし、幼なじみの彼とはあくまで友人として接したいのだ。 アルルは不満を露にしてラグナスを睨みあげた。 「ラグナスは固すぎだよ」 「そうかな?」 「そうだよ、シェゾなんかはしょっちゅう兄さんに文句つけてるし」 「ははは、アイツは図々しすぎだろ」 アルルの言葉に出てきた名前に笑いながらラグナスは返した。アルルとラグナスの幼なじみのひとりだ。シェゾ・ウィグィィ。 ラグナスのビシャシ家とシェゾのウィグィィ家は、共に古くからナジャ国に仕えている騎士の名門だった。それは、白のビシャシ黒のウィグィィと言われる程で、故に幼い頃からラグナスはシェゾと共に国に仕えてきた。歳も近いことから、アルル達の遊び相手にもなっていたのが彼らが幼なじみたる由縁である。 因みにもうひとりアルルの兄と共に4人でよくいたのだが、それが原因でアルルがややお転婆で自分をぼくと呼ぶようになってしまったらしいとか。(何せ周りが全員男だったから) 「図々しくて悪かったな」 ひとしきりそんな思い出にひたって笑っていると、ラグナスの後ろから無愛想な声がかけられてラグナスは凍った。振り返らなくてもわかる、若干高めの声質。 やや殺気のこめられたそれにラグナスが返事を出来ないでいると、向かいのアルルが彼に話しかけた。 「あれ、シェゾどうしたの?」 「ラグナスにサタンが用だと」 「……陛下が?」 男の割りに線の細いシルエット、銀の髪を落としたシェゾは一度息を吐いてラグナスにそうを告げる。それにラグナスは反応を示して振り返った。シェゾの口から出た思わぬ名前にアルルも首をかしげる。 「父さんがラグナスに…?何だろうね」 「あの親バカのことだ、またアルル絡みじゃねえか、婚約者探しとか」 「え〜やだよ!!」 「シェゾお前、陛下にそんな言葉…」 「気にしなくていいよラグナス」 シェゾの言葉に注意をしようとしたら、別の角度からフォローがかかって視線を移す。すると中庭の入り口にもうひとり立っているのが目に入った。 濃い銀の髪に柔らかい笑顔。彼ら幼なじみの最後のひとりで、アルルの兄でありシェゾが直属する主でもある第1王子、レムレスである。 手に書類を抱えているところを見ると、公務の途中だろう。だがメイドを連れていないのは、多分。それに感づいたシェゾが眉をしかめる。レムレスは何かと自分の騎士に仕事を手伝わせるからだ。 「シェゾ、ちょっといい?」 「何で俺が…」 「やだな、君の主人はだれ?」 柔らかく、微笑んだまま告げられてシェゾがため息をついた。それに苦笑してラグナスがアルルに振り返る。 「わかりましたよ…レムレス様」 「では、私は陛下の元へ失礼します、姫」 言って二人の騎士はそれぞれの主に頭を下げた。 .運命なんて知らないとある国のただ少しだけ幸せな話. −−−−−−−− ← −−−−−−−− 日記ログ。 なんか設定だけでおわっちったんですが(爆)これでお母さんルルーでサタシェでレムシェでラグシェでサタアルでレムアルでラグアルでアルシェでサタルルとかになったら面白いと思いました。(ごっちゃごちゃ!!) シェゾを騎士任命したのはレムレスで、理由は気を使われるのが嫌だからとかでさ!!でラグナスとか無意識にシェゾの剣技に惹かれたりしててアルルはレムシェの関係が羨ましくてゴニョゴニョ。 とか。 |