魔導学校にて




ぶっちゃけて、シェゾにはヘンなクセがある。クセというか、発音が変なのだ。

もっと正確に言うなら、とある魔導の、とある語尾の、伸ばす箇所の一部分に妙な抑揚がつく。別にそれがあるからといって魔導の発動にはなんら問題ないし、威力が変わるわけでもない。

だから単純なクセなのだろう。

その魔導自体は別に珍しいものではない。ただ、難易度は高いため、使える魔導師は限られている。
故にそれを使えない者は気付かない。

だから本人も気付かなかったのだろう、自身の発音が一般と異なることに。


.魔導学校にて.




「……前から思ってたんだが」
「あ?」

魔導学校の図書室からひっぱりだしてきた本を床にちらばせて、授業中に校長室を占領している2人の人物がいた。

どちらもこの学校の卒業生である。もっとも、片方はこの学校がまだ男女別校だったころの、だが、もうひとりは最近の卒業生だ。

卒業後もなお魔導学校に通うのは、お互い蔵書目当てだった。(それを彼らの知り合いは本の虫だとか根暗だとか言ったものだが)
もっとも校長室を勝手にしていいのはお互いの稀有な立場、身分のなせる業だった。かたや校長との腐れ縁で校長の気に入りである(というと本人は怒るのだが)シェゾ、そしてかたや魔導学校の姉妹系列にあたる魔導幼稚園の園長の孫であるカミュ。

ともかくとしてそんな魔導師2人は決して仲が良い風でもなく、だが悪くもなく校長室を好きにしていた。

「お前、ダイヤモンドダストの詠唱の語尾、…変だよな?」

そのときだった、長椅子に腰掛けていたカミュが口を開いたのは。それに相槌を打ったのは机で同じ様に本を広げたシェゾ。
続いた言葉はなんということでもないものだが。

「……変、か?」
「ああ、ラストの下り」
「あれだろ、ーー、ーーー」
「そこ、普通は、ーーー」

言われて、シェゾが眉をしかめた。変だった記憶はない、今までずっとこうだった。

「そ、う…なのか?」

今までずっとこうだった。だが正しい保証もなかった。多少発音が違っても発動できる魔導などいくらでもあるし、何よりこれは。

「いや、まぁ別に構わないんだが、な」

押し黙ったシェゾを見てカミュが鼻を鳴らして息を吐き、窓の外に視線を移した。
外では野外授業なのか、実習で校長自ら生徒に魔導の相手をしている。
なんとも平和な昼下がりである。

カミュは視線を戻し、再び本を広げようとして、不意に、シェゾが窓の外を見たまま凍りついていることに気付いた。

何がそんなに、ともう一度外を眺めて。

「ああ……なるほど?」

今度こそカミュは鼻で笑った。シェゾがピクリと肩を震わす。
外では実習で、校長自ら生徒に魔導を叩き込んでいた。朗々と彼が謳うは先ほど話題に上った冷気魔導。
カミュは視線をシェゾに流す。シェゾが恨めしそうにカミュを振り返った。

「お前のそれ…サタンの癖なんだ?」
「ば、ちっが…!!」
「そうかそうかサタン仕込みか、じゃあしょうがないな」

校長の唱えた発音のそれは、シェゾの抑揚の付け方と同じだったのだ。

校長室に響く笑い声に、校庭で校長がくしゃみをひとつ。





なんとも平和な昼下がりである。

(後でラーラに今日お前来てるって言っとくな)
(あぁああ悪かった悪かった聞かなかったことにしとくから!!)
−−−−−−−−

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カミュシェと見せかけたサタシェ的な。
ていうかサタン様の部屋(校長室)で堂々と浮気相手と密会するシェゾが書きたかったというかサタンの発音移ってるシェゾかわいくね?とか色々つめこんだらよくわからんくなった。

とりあえず魔導学校ネタはサタシェでカミュシェでカミュサタカミュでサタルルでサタアルでシェアルでカミュララでカミュアルでというなんともおいしくないかゴルァ!!←と思いました。


あきゅろす。
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