.心、音色高く. 男とは総じて負けず嫌いなものだよ、お兄さん? きうと、細い目を薄く薄く開いて少年は歌うように喉を鳴らした。ひゅう、と口笛を鳴らしてから手にしていた木の笛を口に当てる。 そうして奏でられた音は耳鳴りに似ていた。耳障りな筈のその音はだがしかし不快感を音の裏に包み込むように、あっさりとシェゾの脳に直接侵入してくる。 「や、め…」 聴覚から直接脳を支配する、これはこの種族が得意としているものだ。ただ、この目の前の少年にはそれほどの能力は、無かったはずだ。シェゾは戦慄する。少年は旋律を奏でる。 「僕には無理だと思ってただろう、その油断が命取りなんだよ、お兄さんは、いつも」 四肢を拘束するその音色が一旦途絶えるとシェゾは膝をついた。この少年がアルル程度を操っているのは、見たことがないわけではなかったがしかし。 「お前…」 シェゾが声をかけると少年は小さく眉を寄せ、多少語尾をあらげると確かに吐き捨てた。 「お前もわかるだろ、プライドが高いなら。……無理だと言われることの悔しさが!!」 その言葉に一瞬気圧された、一瞬だった。だがその一瞬を少年は見逃さなかった。 もう一度笛を構えると先程とは音色の違った音を奏でる。今まで聞いたことのない。 先程のは拘束だった。普段使っているのは踊らせるためのもの。そしてこれは。 操作。 「ま、…っ」 意志に反して身体が動く。笛の深い音が脳の奥で命令する。 両膝膝を付く、足を開く、背を曲げる、手を添える、首を上げる、口を開く、舌を出す。全ての動きを指示される。意志ではそれに逆らえない。 少年はにっこりと微笑みそして囁いた。 「……おすわり」 屈辱に眉を潜めたシェゾの口にクルリと片手で取り出した別の笛をあてがって、魔笛使いは無邪気に微笑んだ。 「パノッティ、」 「笛の音よりも高く、鳴いてみせてよ、シェゾ」 −−−−−−−− ← −−−−−−−− パノッティイケメソ計画。 しかしどうしてどいつもこいつも腹黒いのか。(お前のせい) だってそういうほうが書きやすいんだーぶっちゃけ!! パノッティの笛は魔寄せの効果もあるよ!!やべぇぞシェゾ!! はぁはぁ!! |