.ありがとうおめでとう. 生まれてきてくれて生きていてくれて本当に良かったと思う本当に。 思い返せば君に出会えたことが全ての始まりだったようにすら思える。ボクがいたところに君があいに来て、そこから確かにボクらの物語は始まった。なんてことないボクの日常が、確かに、うんざりするくらい騒がしい特筆すべきものへと変貌した。 その騒がしくてどうしようもなくてだからこそ特別な日常、その始まりが君だった。呆れるほどはしゃいではしゃいではしゃいで、単調なようで確かに。ボクは、ボクたちは。 「何でアイツはこんな時期に生まれたのかしらね」 そう言ったルルーが視線を空に流すのをただ見送った。言いたいことは分かる。 寒かった冬が緩やかに終わりを告げ、緩やかに季節が移ろいゆくこの時。何故だかどうしようもなく愛しさを感じる暖かい空気と風と、季節が変わるときの湿った匂いがどうしようもなく切なくさせるのだ。そんな時に君を思うからどうしようもなく切なくなるのだ。 まるで雪を思わせる君が冬と共に消えてしまいそうだ。 嗚呼いやルルーはそこまで考えてはないかもしれないけど。とりあえず季節の変わりに君が生まれたことは、とにかく。 「………良いよね、春になる」 「アイツには不釣り合いだわ」 「うん、残念だけどね」 残念だけど、こんな日に生まれた人はとても愛される、優しい人になるんじゃないかなぁなんて思わせるくらいには愛しい空気が、そこにはあった。 ルルーには面白くないかもしれない、割りと君とは仲が良くなさそうだから。いや、実際そうでもないとは思うけどこれを言ったら怒られそうだからやめとく。 なんて話していたら不意に空気が揺らいだ。小さなつむじ風と共に舞い上がる緑。その中心でパサリと音を立てた翠色が此方を見た。ルルーが素早く立ち上がる。ボクも視線で彼を迎えた。 「サタン様、お待ちしておりましたわ」 「すまんな、待たせた」 「まったく、遅いよ?」 言ったら、ボクたちの騒ぎの中心のサタンは静かに小さく視線を細めた。ああまったくそんな顔しないで欲しい、彼には常に、馬鹿みたいに騒いでいてもらわないと。そんな君みたいな顔。 でないとこの時間がおわるんじゃないかって不安になるじゃないか。 「……最近シェゾに似てきたんじゃない?」 「は?何を言う」 「時間にルーズなあたりとかさ」 「ちょっとサタン様に失礼なこと言うんじゃないわよ」 「ごめんごめん」 なんて冗談を飛ばしてボクは笑った。ルルーが顔をしかめてサタンもボクにつられて笑う。 そうだこの感じ。君と出会って始まったボクらの呆れるほど騒がしくてなのに輝かしくてだから愛しくて故に大切な日常。意味のある無意味な日常。 君がいなくても自然に流れるこの時だけれど、これをくれたのは君だ。 これが続いて欲しいと思うのだ。 「さて、では行くか」 サタンがそう言ってもう一度瞳を細めた。 ああそうか彼もきっと同じなんだろうな。愛しくて仕方が無いんだ、ボクもルルーもサタンも。 ボクらが何気無く過ごすことの出来るこの空間が。 「さて、あの変態をどう絞めてやろうかしら」 「ルルー、絞めるんじゃなくて、」 「からかいにいくのだ」 「じゃなくて!!…お祝いでしょ、もう」 ねぇほら、シェゾ。みんな君を大好きだよ。愛してるよ、感謝してるよ。 だから、おめでとうを伝えに君に会いにいきます。今度は、ボクから。愛しさだけを拾い集めて。 (ありがとうおめでとう生まれてきてくれて) −−−−−−−− ← −−−−−−−− 日記ログシェゾ誕。 愛しさだけを詰め込んでARSSとか。シェゾ出てこないけどな(……)なんかまとまりないのだが時間の都合上日記で失礼。 おめでとうありがとう。 おめでとうありがとう。 |