サタン様が記憶喪失になられたようです




「誰だおまえ」



きっかけとか、そういうことはさっぱりわからない。ただ、朝起きたら俺のことだけがすっぽりと抜け落ちていた、それだけだ。
だからどうだといわれたら、別に自分の名前も立場も婚約者と言い張る彼女のことも愛しのカーバンクルちゃんとやらのこともすべて脳内に存在しているから生活にも何にも全く問題ない、つまりそれだけ。

ただ普段好き勝手に自分を組み敷いては必要以上に絡んでくる彼のその態度には若干腹が立ったけれど。

そうだ昨日だっていつものように容赦なく。
そう思ったら少しだけ腹が立った。

「ずいぶんなお言葉だなついにボケたか」

だから噛み付いてみた。そうしたら彼は自分を見て若干眉をひそめるのだ。
納得がいかない、とでも言うように。

(納得がいかないのはこちらだ!)

もっとも、彼にとっては俺の存在自体不明だったのだろう、部下でも配下でもない存在がさも当たり前のように、さらには対等だとでも言うような態度でそこに鎮座しているのだから。

そうして彼はいつものように、自分を誘うときに座っている窓際の椅子に腰を下ろし、いつものように執拗に甘く俺の名を呼ぶその声で。

迷惑そうな視線をこちらに向けそうして口を開く。





(その瞳には昨夜まであった熱など)
(欠片も)


(しくりと、軋んだ)



(……何?)



(俺は、何?)




問われて気づいた。

何、と言われて答える言葉を持ち合わせていなかった。持っていなかったのだ、自分は。
彼と自分とをつなぐ言葉。身体の関係は幾度となく繋いだが、だがでは彼の何だと言われたら言葉に詰まった。婚約者ではない、自分は彼を好きなのではない。部下ではない、従者でも下僕でも子飼いでも。



では、何?



(彼の視線が外される)
(自分を見てなどいない瞳)






















ただ、その態度に腹が立ったからに他ならない、他意はなくて、ただ、その腹の立つ態度を覆してやろうと、そう思っただけだった。

他に良い形容詞が見つからなかっただけだ。

(後に彼はそう言った)




「今では後悔してる、あの一言」



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乙女でサーセンwww
実際はこいつら恋人とかそういう言葉ではくくれないと思うんですよね。
だけどそこであえて言葉にしようとしたら良い言葉が見つからなくってそういって口走っちゃうシェゾとかかわいいナァと思っただけです。

んでサタン様が記憶取り戻してからめいいっぱいからかわれるといいよ。
嫁になる5秒前だよwww


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