project-STN
※アンドロイドパロ



『system-S-T-N.project-NO.S2-A/code-ARLE/起動します』

.project-STN.
−起動−



ガラス一枚向こうのスピーカー越しに響いた凛とした声をルルーは記憶として読み込んだ。
そうして静かに琥珀色の瞳に光が指すアルルの姿をぼんやりと見送って、ラグナスの隣の椅子にやや乱暴に腰を下ろす。ギシリと悲鳴をあげる椅子に若干の不快感を示してから、ルルーはアルルから目を離さず口を開いた。

「これが、【アルル】?」
「そう、ARLE、君の妹だ。企画名NAtural-Do-Joint-Action、通称【Nadja】。より自然に人間らしく人間が不可能な動きを実現させることを目的としたSTN最新にして最高峰の…」
「ああはいはい」

矛盾を孕んだ説明を朗々と続ける開発者ラグナスの言葉は不必要な情報として適当に聞き流して、ルルーはもう一度アルルを見た。
こんなちんちくりんが最新型だという。なんとも面白くない話だ。自分が稼動してからここSTNでは、かれこれ2年は後続機の起動が確認されていない。2年ぶりの新作がこれとは、世界のSTNの技術も落ちたのではないかと思わせる。そんなのが自分より優れているなんて俄には信じられない。

だがまぁその辺の動きは後で見てやればいい。ルルーにとってアルルの起動が面白くない理由は他にあった。

「で、アルルが起きるまでなんでサタンさまも落ちなきゃなんないのよ」

そう、ルルーにとって一番気に入らなかったのはそこだ。どうして新型のアルルの起動に合わせて、サタンも同時にスタンバイ状態まで落ちているのだ。おかげでここ一週間サタンの姿を見ていない。
不満という感情をあらわに感情表現をするルルーにどこか愛しそうに瞳を細めながらラグナスが答えた。

「仕方ないじゃないか、最新型の駆体はSTNのマザーシステムも担ってるS-A【SATAN】に登録し直さないと…」

苦笑いと共に言われた言葉に半目で返せばラグナスが小さく身を竦める。しかしルルーはすぐに視線を左上のモニターに移した。
画面の中ではアルルと同時に立ち上げをしたサタンが笑顔でレンズ越しにルルーに手を振っている。その映像に少し気を良くしたルルーだが、サタンの背中から伸びたコードの束を目に止めた瞬間もう一度顔をひきつらせた。

「………あのコードは?」
「…あ…、いや、【SCHE-ZO】がサタンに繋いでもらってるエネルギー共有接続端子、だ、けど、」
「……なんでわたくしがサタン様のお部屋に入れないのにあの変態が入ってるのかしら!?しかも、お隣で!!」
「しししかたないだろ!!シェゾは初期型で…君みたいに自力発電できない駆体だから、他からの供給無しの連続稼動時間は3日しかないんだ!!」
「…の欠陥品が…!!」
「ちょ、ルルおれ首しまっ、」

当人に聞かせたらプライドをダイレクトに抉りそうな言葉を吐き捨てたルルーが無意識にラグナスを締め上げながらモニターを睨む。モニターの中では立ち上げを終えたサタンがシェゾの立ち上げ補助に回っていた。

もっとも、それも仕方がないといえば仕方がない、ルルーの稼動年数はまだ2年だが、シェゾは何でも150年は裕に動いているらしい。そんな古代の遺産レベルではむしろ稼動している方が奇跡に近い。彼の兄機であったS-B【ルーンロード】はとうに廃棄処分になっている以上、現存する初期型アンドロイドの中では最古の稼働年数を誇る。
故に彼は「稼働し続けていることに価値がある」という類希な立場を確立していた。


もっとも年数でいえばサタンのほうが上なのだが、彼はSTN機関の看板とも言える母体システムを共有しているので、常に最新の状態でいるよう改良更新されている最古かつ最新の技術を取り入れていた。

『まぁそう言うな、ルルーよ』

そのとき、いいタイミングでかかったスピーカーからの声に、ラグナスの首を絞めていたルルーの機嫌が一瞬で上昇した(それにより、ラグナスは辛うじて致命的な河を渡らずに済んだ)
モニター越しのサタンが笑い、視線を流すとメインモニターの映像が切り替わる。

『アルルも驚いているぞ』

その言葉と共に映し出されたのは、起動したてでいきなりルルーのお怒りを目の当たりにしたアルルの姿。目を丸くしてまばたきしている様が妙に人間くさかった。

間もなく左右のサブモニターにサタンとシェゾの姿が表示されると、今この施設内にいるものが全員メインルームに通信を繋いでいることになる。

『さてみんな、新しい家族に挨拶だ』

サタンの言葉に今まで足を組んでいたルルーがすばやく立ち上がり正面を見据える。モニターの奥のシェゾも静かにすまいを正した。
その様子にラグナスは満足げに微笑んだのをサタンが見送り、やがてルルーが口を開いた。

『はじめましてアルル、純戦闘用アンドロイド.企画名無し.project-NO.S-R/code-RULUEよ』
『初期企画テスト並びに稼動実験用.企画名WEGEY.project-NO.S-C/code-SCHEZOだ』
『そして私が、施設及びシステム管理総括.企画名system-S-T-N.project-NO.S-A001/code-SATANだよ』

『はじめまして先台、第2期全環境活動用.企画名NADJA.project-NO.S2-A/code-ARLEです』

にっこりと笑い首を傾げた最新型が、STNに所属した日のことだった。

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日記ログのアンドロイドパロでした。
アンドロイド系って、若い子(後続機)のほうが優れてるっていう点が萌なんですよね。
ちなみに裏設定でルルーの体重97キログラムとか言えなかったのが残念です。アンドロイド(特に戦闘用)って見た目に反してめちゃくちゃ重いイメージ。
ちなみにシェゾは電力とかプログラムとか欲しがりっこ(笑)



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