無防備にただ不敵に微笑んで玉座の上で足を組んだ魔王にまっすぐに切っ先を向けて奥歯を噛んだ。魔王は構えもしない。死にたいのか殺して欲しいのかそれとも殺せなどしないということか、自分では。 「それで、仮に私を殺したとして?」 貴様にアレが救えるのなら。 魔王はただそう言って瞳を閉じた。 .波紋. わかっている、自分では彼は救えない。 救う、掬うそう救う。それこそが自分の存在意義なのだ。世のため人のため救いを求める誰かのために生きてきた、だがそんな自分では駄目なのだということはもう。 魔王のそれは不変であり絶対。唯一にして無限。暴力的なまでの命令性。強制的な事実。 それこそが彼の求めたものだ、誰の意見があろうと関係はない、たとえ拒否してもその言葉ごと丸々呑み込んで有無を言わさず強引にねじ伏せてくれる、それだけが重要だった。 割と誰にでも嫌悪を示す彼が唯一魔王に対してだけは嫌悪と同時にどこか違う雰囲気を出すことにもう気づいていた。プライドの塊である彼が甘えるためには、相手が精神的にも能力的にも絶対的に上である必要があったのだ。 「……俺、では、無理だと?」 わかっていながらそう言った。何か口に出さないと負けると思ったのだ。自分では魔王どころか守りたいはずの彼にすら適わない。経験も能力も心の闇の深さでも。 「少なくとも私と同じ立場になれるとは思わんな」 すなわち自分では彼の望む絶対性は何一つとして与えられないことも。 それでも魔王に敵対の剣を突きつけたのは、負けたく無かったからだ。勝てないことはわかっていたけれど、負けを認めてしまっては終わりなのだから。 「それでも、それなら。俺はお前とは別の位置を見つけてやる」 魔王と同じ道を歩けるわけはないとわかっていた。歩けるはずがない、自分と魔王とはそもそも存在の意義からして真逆なのだ。ならば。 チャキリ。 刃が敵対の音を立てた。それでもなお動かない魔王はただ瞳を細めてどこか嬉しそうに顔を歪め。 「……それでいい。出来るものなら」 言って小さく笑った。 足掻け。そう言われている気がした。 (なぁ。本当は私にこそ掬うことなんて出来ないのだよ) (共に堕ちることは容易いけれど) (だから、貴様という波紋を) −−−−−−−− ← −−−−−−−− 完結した形、動き出す形。 サタシェ←ラグ。 サタンさまが当然譲るつもりなんて毛頭ないのだけれどラグナスをけしかけて変化を持たせようとしたはなし。利用する気まんまんなうえ楽しんでます。 ラグvsサタとかレムvsラグとか好きですが常に立場が弱くてごめんラグナス←。 |