従事の包容



.従事の包容.





鋭い痛みで目が覚めた。
両の手を走るような痛み、貫かれた掌が壁に縫い止められている、熱いものが掌から零れていく感覚にシェゾの意識がゆっくりと状況を読みとろうと働いた。
開かれた腕が描いたのは十字。

薄くぼんやりと開いた瞳に写ったのは赤く染まる砂嵐。それが徐々に晴れていくと共にシェゾの意識も覚醒を始める。

「シェゾ、―――――?」

直後に上から降ってきた言葉にピクリと身体が震えた。何を言われたのかは分からない、ただ語尾があがっていたこと以外は。
しかしその聞き取れなかった言葉は確かにシェゾの脳に反応を強制する。その音その響きそのものが確かにシェゾの本能を震わせた。
何を言っていたかなんてわからないがもはやそんなことは重要ではなかった。何を、ではなく誰が、言ったかが、問題だ。
響いた声の音質が揺らぐ意識を無理矢理に引き上げる。シェゾの本能が全力で忠告した。

彼が聞いている。返事を。

「……あぁ」

もはや反射のようにシェゾは肯定の言葉を返す。返さねば、ならない。聞かれたのだから。

彼の言葉が何を言っていたかはわからない、だが語尾があがっていた、ならば彼は自分の言葉を待っているはずだ。何か、何かなんでもいい。
シェゾは本能と反射で動いた。

緩やかに顔を上げる。

真っ赤な砂嵐の向こうに一瞬見えた、大丈夫間違っていない。声の持ち主はそこにいる。
霞む意識に吐いた吐息が細くヒュウと喉を掠めた。シェゾは伸ばそうとした手が動かないことに気づいてただ緩やかに口角をあげた。

大丈夫。

「愛してるよ、サタン」



(だから、)




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日記ログ。
十字に貼り付けてあんあんなクリスマスネタのはずでした。



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