■白花
■
『俺はどうすれば良いんですか?』
『…生霊は退治できない。だから』
突然,碧の双眸が細められ同時に,眉間に皺が寄せられた。
『何か…』
『あいつ…何をやってる』
独白だと取れる台詞には,感情が滲みでていた。会って初めて見たソレは,今の状況が良くないことを示唆しているようだ。
でも,俺には何も感じられない。
『雅親』
『え…はい』
不意に名前を呼ばれ,俺は気の抜けた声をだす。
『名を呼ばれても,絶対に返事をするな。雅親』
『は…ッ…』
早速答えそうになり,手で口を押さえた。
『これから起きる事は,夢とでも思えばいい』
突如,戸が一斉にガタガタと鳴り始めた。
驚きが恐怖へと連鎖していくのか,震えだす身体。
何かが外に居る。ソレだけは解る。きっと呼んでいるのだ,俺を。
――――――雅親様
『――ッ』
刹那。
戸が一斉に開き,ぶわっと風が部屋を駆け抜けた。
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