■にゃんこ日和 ■ 不気味と思いつつ,しかし足は真っすぐ音の根源へと向かう。 その座敷の戸は閉ざされていたが,確かにこの中に何かがある。それだけは確かな事。 『……………』 そっと戸に手をかけた。 心臓は興奮と緊張でドクドクと高鳴っており,手は呼応して震えていた。 ――チリ‐ン 鈴の音を合図に思いきり戸を滑らせた。 ■■ 『……は?』 不可思議な光景に,俺は目を疑う。 部屋には線香のような,お香のような,香水とは違う独特さが漂っている。 鏡台や和タンスが置かれ,見事な柄の着物も掛けられていた。 そして。 『……人?』 何よりも,部屋の中央で眠る着物を着た人物。当たり前だが,俺はコイツを知らない。あまつさえ,一般人とも言い難い。 . ←→ |