■白南風間際 ■ ■■ 出会って7年目。 モモは不思議な子だって解っていたはずなのに。 『…………は?』 『だから,オレ消えるから』 消えるって,何処に? ■■ 夏休みを明日から控えた今日は終業式。セミの声と蒸し暑さは今日に限っては心地よい,これからの休暇を期待させるものになる。 そんな登校途中。 夏休み中の計画を立てようとしたら,まさかの失踪宣言。幾ら俺がモモに慣れているとは言っても,流石に立ち止まってしまった。 『…何処に消える予定?』 『さぁ?』 小首を傾げ,モモはスタスタと歩いていく。 さぁ…って自分の事なのに,やっぱりモモは他人事のように言う。それにはもう慣れてるから,何も言わない。 兎に角,モモの後を追う。 『ドコかは解らないけど,期日は1週間後。それに……』 不意に言葉が途切れた。 『……それで?』 モモは俺へと視線を移し,そしてまた前を向く。 『この世界に居なかった事になる…らしい』 非現実的で,それでいて確かな予告だった。 セミが鳴いてる。蒸し暑さは夏休みへの期待の予感。 軽い軽い鞄が腕から落ちた。 ■■ モモと初めて出会ったのは小学校4年生の頃。モモが俺の家の近所に引っ越して来たから。 初対面の印象は不思議な子。ぼんやりとした,何を考えているのかはよく判らない感じ。今のモモも見た目以外はそのままだ。 モモには不思議な力があった。例えば,地震が起きる前に気付いたり,懸賞に応募すると必ず当たったり,通るのをやめた道で事故があったりとか。 たぶん,他にも力は使えるのだろうけど,モモは好んで能力を発揮しようとは思ってないようだった。 だから,自分の状況をモモが察知出来ても不思議ではない。 消えるという,縁起でもない事を察知してしまった訳だけれど。 . ←→ |