黒コノハ

※ちょっとだけ黒コノ→エネ、コノ→エネ描写有り







もう無くなったものは戻って来ない。その象徴ともいえるのが、この自分自身だ。

あのとろとろと甘い日常生活は、過去に終わったものであって。終焉を迎えた今ではただの記録として残るだけだ。
素直じゃない黒い髪の少女と鈍感な病弱少年は、間違いなくあの日に死んだ。それは覆せない事実で、今は姿を変えて生を全うする彼らには全く関係無いことなのに。
対峙した赤の良く映える白をした青年は泣き叫んだ。僕を返せよ、と。
しかしどうにもしてやれないことは、叶えてやることは出来ない。例え昔は同一の身体であったとしても、今はもう分裂してしまったのだから。
その絶望に塗れた顔が可笑しくて、当初なら早々に始末する予定だったのを、変えた。

女王と女王が絶対的に信頼を置いている青年は、一番最期と決めていた。白い青年は二番目にサヨナラする予定だったが、それを後ろから二番目にずらして計画を実行した。

―――結果は、上々だった。

青い電脳体となった少女が赤いジャージと共に消えたのを見て、白い青年は発狂するように崩れ落ちた。
女王と揃いの桃色の瞳を絶望に染めて、奴だけに見えている俺の姿を睨み付ける。感情は無くなっていた筈なのに、目の端には涙を溜め、表情からは怒りも見てとれた。
白い青年は、まだ青い電脳体の少女が好きだった。それこそ、過去となり果てたあの時から。
けれどそれは俺も同じで、電脳体の少女がデリートされる寸前に、会話をした。それが彼女の最期だったと考えると、血液が沸騰してしまうのではないかと思うほどに、興奮する。白い青年とは違って、俺に託したのだともとれる、奴に対する優越感。

そしてその暫く後で漸く気付く。本当に取り戻せなくなっていたのは、俺自身だと。



枯れた花の涙
(気付けば全てを失って、愛する少女すらもこの手で葬り去ったのだと。)
(気付かなければ、こんな絶望は知らずに済んだのに、)




今更ですが、アウターサイエンス100万再生おめでとうございます!
黒コノハは全てを手にいれたように錯覚していただけで、本当は何もかもを失っていたんだ、という、とっても分かりにくい話でした。

お題提供元:水母「http://nanos.jp/miseryxlady/」




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あきゅろす。
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