摂津×薄雲
※若干R-15

















「・・・俺の知らない女みてェだな」

乱れた着流しをそのままに、普段なら触れることすら許されない肌に触れた。
大して白粉をはたいてもいないのに白い肌は、まるで真珠のようにつるりとして、それでいて掌に吸い付いてくる。昔はそんなことを欠片も気にしたことは無かったのに、と思わず今の自分の姿に自嘲した。
そのまま手を進めようかと思ったが、やわりと細い指先を手に重ねられて、遠回しに侵攻を止められた。そうだよなァ、と軽く笑って、手を退けた。今ならまだ戻れるような気がして、しかしそれは叶わぬ夢だと冷たい外気が肌を撫ぜた。隣の女も同じ様に笑って、いそいそと布団を抜け出した。
枕元に放置したままの煙管を取って、まだ中身が僅かに残っていることを確認して、煙管の傍に放置された火付け棒を火皿に押し込む。口内を通って肺へと逆流した紫煙を静かに吐き出す。いつも通りの流れに、頭は幾らか落ち着きを取り戻した。しかし心臓は煩く鳴り響き、静かになる気配はない。

「アラ、誰が喫んでいいと言ったかしら」

くすり、と笑う声が耳に滑り込む。心地のよい声に、思わず頭が蕩けてしまいそうになった。
声の方へ振り向くと、相変わらず素肌を晒したままの女がそこに立っていた。
黒い髪は長く、白い肌に吸い寄せられるように、肢体に艶かしく絡み付いている。朱を引いた唇はその裸体以上に目に毒だ。完璧に近い比率を持った肢体は、紫煙の薄い白越しとはいえ、目を奪うには充分な材料だった。

「喫むなとも言われなかったからな」
「・・・何時の間にそんな意地悪になったんですの?妬いちゃいますわ」
「・・・ヘッ、言ってな花魁さん」

微動だにしない女を見て、汚い欲がじわりじわりと沸き上がってくる。
目の前にいるのは、昔からよく知る少女で、女だ。もう道場の前で一人寂しく座り込んでいる少女はいない。ただ一人、惚れた女がそこにはいた。
今となっては身分違いだと重々に承知している。自分は時折城に勤める大して財力も権力も無い一端の武士で、目の前の女は店一番の女、太夫だ。
それでも手に入れたいと願ってしまうのは。

「どうお呼びしたら宜しいかしら、いつものようにお呼びします?
 ・・・それとも、「正雪さま」と、呼ばせてくださるので?」

朱を引いた唇が弧を描く。闇夜の中で、それは獣を捕らえる罠のようにも見えた。


くゆらぐ紫煙の向こう側
(そう呼ばれたら、なんと嬉しいことだろう)



結局名前出す場所が見つかりませんでしたが、摂津×薄雲(おキヨ)なんですよ!!
摂津さん、どうやっておキヨさん身請けしたんですかね・・・。

お題提供元:秘曲「http://aiueo.1.tool.ms/」



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