ミナクシ
高く積まれた資料の山の間を縫って、ほのかな甘い匂いが漂ってくる。
香ばしいような甘いような、なんとも言えないその幸せな匂いに思わず目を閉じた。

「・・・先生、」
「・・・分かってる、分かってるからそれよりも先は言わないでくれ」

その机のすぐ脇に立っているカカシの鋭い視線が手元を睨む。
幾ら処理をしても終わりが全く見えないこの書類の山に溜め息が出るのは仕方がない事だと自分に言い聞かせる。溜め息をつくと幸せが逃げると言い残した神様は、溜め息を出さずにはいられない仕事を押し付けるのが大好きらしい。

「あのさ、カカシくん・・・」
「駄目なものは駄目です。いくらクシナさんがもう下まで来てても駄目です」
「そこまで分かってるなら許してくれたっていいんじゃない?」
「あなたには「四代目火影」という自覚はないんですか?」
「カーカーシーくーん・・・」

遂に手を動かすことさえ億劫になって、筆を硯へと立て掛けた。そんな火影を見て、今度はカカシが重い溜め息を吐いた。

「気持ちは分からないでもないですが、どのみちあと15分はここには来ませんよ、クシナさん」
「15分も?!ってことはまだ15時前なのか」

そう言えば火影室の時計が壊れていたことを思い出す。それは後でシカクにでも頼んで直してもらうとして、残り15分間は否応無しに書類を捌かなければならない。
昼休憩後、15時までは仕事をすると宣言したのは間違いなく自分だ。

「いいんですよ、俺は。15時からの休憩を無くしても」
「ん、クシナとの休憩のためにならオレは何でもするよ」

やはり筆を取るのは億劫ではあるけれど、クシナと共有できる時間は出来るだけ確保したい。
普段から夫婦とは言え共有できる時間は少ない。だから折角厳しいカカシが許してくれたほんの僅かな時間を少しでも削ること無く、長く一緒に過ごしたいのだ。

(今日のクシナのおやつは何かな)
「先生、顔緩んでますよ」


午後三時のあまい魔法
(「先生、今度休憩後に逃げたらクシナさんにきちんと言っておきますね」)
((・・・ばれてる))




ミナクシにどっぷり漬かり込みました・・・。ミナクシうまうま。

お題提供元:水母「http://nanos.jp/miseryxlady/」


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あきゅろす。
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