ミナ→(←)クシ
「今日こそちゃんと勝負するってばね!!ミナト!!」
「うわっ、ちょ、ちょっと待ってよクシナ、俺は君と戦いたくなんかな―――」
「問答無用ーっ!」

緋色の髪が靡くと共に、拳が宙から振ってきた。
その拳をすんでのところで身を捩ってかわすと、クシナは止まろうともせず、そのまま固い地面にロケットの如く突っ込んだ。
石造りの地面が割れてめくり上がったのを見て、顔が青くならざるを得ない。あの強烈なパンチを避けなければ、今ごろは地面がめくり上がる代わりに肉片が飛び散っていたことだろう。
しかし土煙が上がっている中でも、緋色の髪が動くのが見える。

(―――まだ諦めてないってことか)

やむを得ず今度はしっかりと構えて第二撃を待つ。土煙が立ち込める今、クシナがどこから飛び出してくるか分からない。
これが普通の子供同士の喧嘩であれば、相手のたてる足音を聞き分けてその方向へ構えていれば良い。
ただ、今の相手は同じ学校に通う生徒とはいえ「忍」だ。いくら耳をすませていても足音の一つどころか、地面の砂利が動く音すら聞こえない。

ゆらり、と土煙が僅かに歪んだ。


「クシナ、捕まえた」

今日は上手く行った、と自然と頬が緩む。理由は己の中の任務成功というだけではなく、失敗すれば命は無かったかもしれないという安堵、そして両腕の中に閉じ込めたクシナの太陽のような優しい匂いにもきっとある。
突き出された地面をも砕く拳を、手のひらで同じだけの衝撃を加えることで相殺し腕を掴んで捕まえるなど、判断等含めて一瞬で出来る物ではない。

「は、離してってばね!!」
「いやだ」
「ミナト!!」
「離したらまた俺のこと殴るか、逃げるんだろ?」
「っ・・・」
「だからいやだ」

抱き締めた自分より少し小さい身体は、寒くもない筈なのに何故か震えている。
聞こえる心臓の動きはやけに早い。まるで全力疾走した後のようだ。

「・・・クシナ?」

体調でも悪いのか、それとも先程地面に突っ込んだ時に怪我でもしたのか―――。
慌ててクシナの顔を覗き込むと、まるでクシナの髪のような色に顔が染まっていた。

「ど、どうしたの、クシナ、調子でも・・・」

悪いの、と続けようとしたが、それは叶わなかった。
凄まじい衝撃が腹部を襲った。ありきたりだが、例えるなら熱した鉄を押し付けられたような痛みが腹部から神経を伝って身体中に響く。
少し腕が緩んだ隙に、クシナは既に構えていたであろう拳を容赦なく叩き込んだのだと気付いたのは、クシナの長い髪がもう僅かにしか見えなくなった後だった。
この痛みが治まるまでは、情けないが地面に丸くなりながらうずくまっている他無さそうだ。

「でも、好きだよクシナ」

いつも伝える前に逃げてしまうクシナに、今日もまた愛の言葉を一つ、呟いた。






いまいち良くミナトの一人称と性格が分からない・・・。
ナルトを守るため、最終的には二人とも死んでしまいましたが、ミナクシ大好きです。



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