槍剣
双槍が乾いた音を立てて、冬木の地に暴れ落ちた。
苦しみに喘ぎ叫んでいた口は、現在閉口している。
一文字に結ばれた口の端からは一筋の紅色が伝い、双槍の傍らで血溜まりを作り始めていた。

「・・・貴方はもっと幸せになるべきだ」

黄金色に輝く大剣を携えた少女が静かに涙を流しながら呟く。
黄金色は闇色を持つ紅に塗れていた。
一筋落ちる紅とはまた別に、大剣から伝う紅は少女の、大剣を携えるには小さすぎる手を紅く汚した。
汚染されてしまった彼が、英霊の座へ還れるかは分からない。どちらにせよ、自分が英霊の座に還ることはあるのか、それが一番不明瞭だ。
この先にいつ出会える事が出来るかも、全く分からない。
彼の二度目の最期を見届けつつ、段々生気が僅かになっていく彼を抱き締めた。

(今回の戦争で死ねなかったのならば、私はいつ英霊という座に還れるのだろうか)

「・・・セイバー」

弱々しい声が、少女を呼んだ。

「なんでしょう・・・ランサー、いえ、ディルムッド」

初めて、そこで彼の名を呼んだ。まるで彼にそう答えることが、必然だったかのように。
彼は赤に染まりかけた瞳を見開いて、そして少女の滑らかな頬にその骨張った手を添えた。

「・・・ありがとう、アルトリア。
 愛していたぞ・・・我が双槍の好敵手よ・・・」

徐々に崩れ行く彼は、それ以上は何も望まず、何も言葉を発する事は無かった。
彼が消え去った後、少女は膝から崩れ落ちた。

「・・・最期にそんな事を言うなんて、ずるい人だ、貴方は」


おやすみ、続きは来世で

(だから、今は貴方の私のせいで汚れてしまった心を、どうか休めてください)




セイバーは五次聖杯戦争でもディルの事を覚えてて、そのせいでクーに剣を無意識の内に向け辛くなってたらいいなー。
勿論クーは無関係な事は知ってるし、ディルは怨念に狂ってるんだけどね。

お題提供元:水葬「http://knife.2.tool.ms/」


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