兵→←不二

(「やぁ、不二子さん」)

脳内にするりと滑り込んできたそれは、今ここで聞こえてはならないものであったのに。

「兵部京介・・・っ!」
(「やめろよ、その犯罪者めいた呼び方。いつもみたいに「京介」って呼べばいいだろ」)
「・・・何か用でもあるのかしら?あたくしもそこまで暇じゃなくてよ」
(「・・・別に、」)
「は?」
(「別に用件なんてないよ不二子さん。
  僕はただ、君に会いたくて来たのにさ」)
「その言葉、あたくしだけに言っているのなら信用できるけどね、薫ちゃんにも同じこと言ってるなら、もう言わない方が身のためよ」
(「なんでさ?」)
「自分の身が可愛かったらそうするのね。
 あたくしだってあんたと同じだけ年を重ねたけどね、あたくしもあんたも、もうそろそろ限界が近いでしょ。それを考えたら、なんとしてでもあんたを檻の中にぶちこまないといけないのよ。
 好機は例え一回でも逃さないわよ」
(「年甲斐もなくかっかするなよ」)
「こっちの台詞よ!」
(「別に僕だって女王のことが本気で好きな訳じゃないさ。
  そんなこと位―――不二子さんも判ってるだろ?」)

その言葉が、やけに胸にこびりついた。
同時に心の奥底で、その言葉を求め焦燥していた自分がいる。

「・・・さぁね、あんたも皆本クンと同じで、若い子の方に興味があるんじゃなくて?」
(「あんなやつと一緒にされるのは癪だな。
  だけどそれを言ったら不二子さんだってそうじゃないか、若い男を散々食っておいて、そんなことを僕に言える立場かい?」)
「生憎あんたと違って、テロメテアをコントロール出来るほど器用じゃなくてよ。
 あたくしのは食事だもの」
(「・・・全く、妬けてくるね」)
兵部が肩を竦めるのが見えるようだった。彼のいつものクセ、特徴。
全てがテレパシーの会話でも判ってしまうぐらいに。

(あたくしの罪は・・・あんたを好きになってしまったことね)

(「―――僕が愛してるのは君だけさ・・・姉さん」)



おおよそ信憑性のないテレパス


怖くて聞き返すことが出来なかった。
それは「姉弟」としてなのか、それとも「蕾見不二子」という個体に対しての言葉なのか。





切ない兵不二も大好きです。

お題提供元:≠エーテル「http://1.tool.ms/?lay」




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あきゅろす。
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