生憎と普通の女じゃないの
それは、まだ箱庭学園の生徒会が二人だった頃の話だ。
 
がらり、と生徒会室のドアが勢いよく開いて、案の定入ってきたのは長い濃紫の髪を携え、腕にはまだ4つもの腕章を付けている、生徒会長だ。
その生徒会長・黒神めだかは、箱庭学園の十三組と呼ばれる異能者(アブノーマル)ばかりが集まったクラスに所属し、その中でも最たる能力を持ち合わせている人物で、実質このめだかの支持率は98%にまで至った。
箱庭学園の生徒ほとんどが、めだかに対して信頼を寄せており、めだかはそれに答えて日夜努力・・・というよりも、めだかは元々「人の役に立つために生まれてきた」と自分で豪語するような人間だ。あんなものは「努力」のうちにこれっぽちも入らないのだろう。
 
しかし、その異能者に3歳の時からつき合わされている身にもなれば、それは大変、というレベルを遥かに超える。
そもそもめだかは、全人類が自分と同等のレベルである、と考えてやまない。実際は、めだかを超えるような人類を俺は見たことがないし、自分も超えるようなことは決してない。
 
「何を辛気臭い顔をしているのだ、善吉。手が止まっているぞ」
 
いきなり生徒会室に入ってきて、自分の席にも着かず、いつも真っ先に俺の様子を窺う。
・・・今のように、手が止まって居るのを見つけられては、なくなりかけていた書類の山が再び高く俺の机の上に聳え立つのだ。
 
「どうした、善吉?全然書類が減っていないが?」
「・・・めだかちゃんが今、増やしたんだろっ・・・!!」
 
恨めしそうな声が、喉の奥から絞り出されて、おきかけていたペンを再び手に取った。
最初あった量よりも、その量が増えている気がして、更に深い溜め息をつくと、めだかはニヤリ、と不敵に笑った。
 
「最近目安箱の中身が日に日に増えてきていてなぁ。
 今日数えただけでも、ざっと600は超えている」
 
めだか自身、持っている書類に軽く目を通してふぅ、と悩ましげな溜め息をわざとついた。
・・・まるで、俺に働け、と強制的に促しているように。
 
「あのなぁっ、めだかちゃん!
 俺は、めだかちゃんみたいに、アブノーマルじゃないからさ、そんなめだかちゃんと同じレベルにはなれないんだよ・・・!!!
 こんな量、今日中に片付くと思うか?!」
「片付くさ、下校時間の6時まで、あと2時間はあるぞ?
 書類処理ぐらいならば、2時間あればその量は十分こなせるだろう、善吉」
 
今度は不思議そうに首を傾けられて、頭の奥からガンガンと頭痛の元が這い上がってくる気がした。
片手で頭を抱えつつも、もう片手ではペンを走らせる、という動作にももうなれたものだ。
 
「善吉よ。
 お前は、常に私の隣に居るべき存在なのだ・・・生徒会の庶務としても。
 それは分かるな?」
「・・・俺の思っている意味と違う意味でなら、隣に居るべきってのは分かるけど?」
「ほほう、ではお前が思っている「私の隣に居るべきお前」とはなんだ?」
 
挑発するように言ってくるめだかに、カチン、と頭痛の元が消え去って、イラつきの感情が脳内を支配した。
しかし、その挑発には乗らずに、落ち着け!と自分の胸に言い聞かせる。
 
「・・・俺の言う、めだかちゃんの隣ってのは、めだかちゃんを守るために俺が居る・・・そういう隣だよ。
 別に、庶務だからって、めだかちゃんの隣にいたいわけじゃない」
 
妙に心臓がバクバクと脈打っていて煩い。別に告白をしているわけでもなんでもないのに。只、いつも心中で思っていることを言葉にしただけなのに。
今度は落ち着け、と心と心臓に言い聞かせても、言う事を聞いてくれない。寧ろそんな言葉を無視して、鼓動は早くなり続けるばかりだった。
 
そんな中でも、めだかは顔色一つ変えず、逆に溜め息を一つついて、言葉をつむぎだした。

 
「・・・善吉、私はお前の事を信頼しているし、好きだよ。
 しかし、私は「生徒会長」という、ある意味そこらにいるような女子とは違うのだ。
 守ってもらえるのはありがたいことだが、それはお前が私にとってもう少し大切な存在にならなければ、私は守ってもらいたい、などどいう感情はもてんな。
 そのためには、庶務として私の隣に居ることから始めてくれ」
 
それは、言い方を変えれば「私とお前は格自体が違う」と遠まわしに言われているようなものだ。
しかし、めだかの口から「好き」という、たった二文字の単語だけで心中が満たされて、さっきまでは煩かった鼓動が嘘のように鎮まっていく。
 
「・・・分かったよ」
 
なんとなく、府に落ちない部分もあるが、この際、それは無視しよう。
 
とりあえず、めだかちゃんに一歩でも近づけるように、と俺は書類と格闘することを再会させた。
 
 
 
 
 
 


善めだ。久々にジャンプ読んだので。
めだかちゃんの口調が、未だによく分かりません・・・orz
単行本読み返そう、そうしよう。
 
  
強気なハニー10のお題
http://box.usamimi.info/「創作者さんに50未満のお題」


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あきゅろす。
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