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小説
第三話
ー俺もあいつが欲しいなー

第三話
夜更け前。
静かな町を太陽の光が照らし始めた。
「朝か・・・」
図書館の窓から町を見回す。
大きな窓からは町中が見渡せた。
(初めてだな・・。こんなに長く城にいることなんて)
ルアンは、借りようと思っていた本を持ち、席を立った。
「よう」
この一日。いや、正確には昨日だが・・。
この声は飽きるほど聞いていた。
振り返るとやはり、輝かんばかりの金髪に冷たく燃える青い瞳。
茶会で会った男がいた。
「何の御用です?」
「俺のパートナーになってくれ用」
「では、サヨナラ」
「おい、無視かぁ?」
ルアンはシャマルの横を通り過ぎようとした瞬間、やはり行く手を阻まれた。
手が本で塞がっているため、生憎殴ることは出来ない。
「殴るなんて考えるな。俺を殴ったら、国外追放だぞ」
「バレたか」
「おいおい、考えてたのか・・」
シャマルのツッコミを軽く受け流し、ルアンは図書館を出る。
「逃がすか!!」
「逃がせっ!!」
そうして二人はものすごいスピードで城を駆け回った。
「はぁはぁ、あいつ、体力の、化け物か?」
シャマルは、国内でも体力は人一倍にあった。
だが、今は息を荒げて座り込んでいた。
「どうです?追いかけっこは終わりにしません?」
息が荒いシャマルを見下すように、ルアンはニコニコと笑顔でやってくる。
「お前は、化け物か!?」
「いいえ。ただ、人よりも体力があるだけです」
シャマルは、立ち上がるとルアンの両手をバンッと壁に押さえつけた。
「・・・・。何?」
「捕まえるのが面倒だからな」
シャマルの蒼い瞳がルアンを捕らえる。
「本当に・・・。なっては、もらえないか?」
「貴方に聞きましょう」
「ん?」
ルアンは、真っ直ぐに見据えて・・・。
「貴方は、力を得て、一体何をしますか?」
黒曜石の瞳は俺を捉える。
「力を得て、皆の夢が叶う国を作りたい・・・」


「エルトリオ卿、次はこの資料を見て頂きたいのですが・・・・」
「あぁ」
資料を受け取ると、ドアのノック音が聞こえた。
「どうぞ」
「邪魔するぞ」
そこには、金色の癖のある髪と空の瞳をもつ男がいた。
「邪魔をするなら、お引き取り願いたいけど?」
「そういうな。やっと、お前との距離が縮まったんだからな」
彼はそういうと偉そうにソファーに座る。
俺は気にせづ仕事を続けた。
「何をしている?王でもないのに、執務か?」
「見れば分かるよ」
シャマルは、顔を近づけてきて資料を覗き込む。
「貴族会議結論・・って、国のことか!?」
「そんなに驚くなよ」
「いや、驚くだろ・・・。待て、お前まさかもう、エルトリオ家の領主か?」
「違うよ。兄が今は居ないからね」
「そうか・・」
シャマルは、再びルアンを観察し始めた。
「お前の黒は見方によれば、紺色に見えるな」
「あなたも、視点を変えればただのストーカーだ」
「そういうな」
シャマルはソファーから立ち上がるとルアンの髪を指に絡める。
「これほど綺麗な黒。それに、特殊な三日月が入った黒曜石の瞳を持つお前が友として好きだな」


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