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「えっそれでルシウス先輩の彼女のふりをするの?!」
「うん…」

夕食の席で小声でいきさつを話すとリリーはルシウス先輩に対して怒っていたけど、私はもうそれどころじゃなかった。珍しく元気ねぇなとシリウスに言われたくらい。やっぱり考えたけど、今まで恋愛経験もろくにないのに彼女なんて演じきれるわけないよ。はぁ、と天井を見上げる。今日はきれいな星空だった。お父さん、お母さん、私はこれからどうなってしまうのでしょうか…。

「はぁ…」
「なまえ」
「!ル、ルシウス先輩」
「少しいいか?」

ルシウス先輩は朝とは違って優しく微笑んでいた。広間中の視線が私たちに集中する。隣のリリーはルシウス先輩を睨んでいた。ルシウス先輩はあえてそれに気付かないふりをして私に手を差し出す。

「あ…」
「話がある」

迷ったけれど、これ以上大好きな人に恥をかかせる訳にもいかず手をのせた。ざわつく広間を私たちは後にする。少し前を歩くルシウス先輩の背中は、遠くから眺めるよりずっとたくましくて大人の男の人みたいだった。

「色々お互いのことを知っていないと不都合だろうと思ってな」
「そうですね」
「私は今まで特定の女を作ったことはないから心配ない。お前は?」
「あ…私いままで恋愛経験ないんで、なんにもないです。大丈夫です」
「…ない?」

私の一言にルシウス先輩がつっかかった。眉間に紫波を寄せて顔をずいと近付けて、ないだと?ともう一度。ちょっ、と…。かっこよすぎますよ先輩。無意識?天然?なんなの、私ばっかりドキドキさせられてる気がするんですけど!!

「はい、あの…私恋愛経験まったくないんです。だから恋人役なんてとてもじゃないけど…」
「何故ない?理解に苦しむな。容姿が良ければいくらでも寄ってくるだろう」
「はい、たしかに私は美しいんですけど…」

なんだか怒られているような気分になってしどろもどろしている私にルシウス先輩は吹き出した。今までのどの笑顔とも違う普通の男の子の笑顔だった。先輩でもこんなふうに笑うんだ。

「そうもはっきり自分でいう奴は初めて見た」
「そ、そうですか…私自分の顔大好きなんです…あはは」
「予行練習だとでも思っておけ」

本番もルシウス先輩とが良いんですけど…実現しそうにないな。恋愛スキルゼロの私にルシウス先輩は色々教えてくれた。意外と面倒見、いい?



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