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「やだ…出たくない…」
「しょーがねぇだろ退院なんだから!おら、行くぞ!」
「なまえ、まだどこか痛いの?」
「…ルシウス先輩に…フラれた……かも」
「えぇ?!」

その場にいた皆の声がハモる。マダムが静かにしなさいよといわんばかりの視線を寄越してきて皆口を抑える。まぁ言わなかった私が悪いけど、退院の日までにはまた何かあるかもって思ってたのに。結局ルシウス先輩はあれからお見舞いには来てくれなかった。

「かもって……どういうことなの?」
「…わかんない。距離置こうって言われた」
「他の女の子が気になり始めたとか?」
「…やっぱそうなのかな」

ジェームズの言葉は胸に痛い。私も考えつくとしたらそれしかなかった。私以外にもっと適役な子が見つかったのかもしれない。私浮かれてバカみたいだった。今は本当に無気力で何もしたくない。

「…いや…」
「?何、シリウス…」
「あ…悪ィ、俺呼び出されてたんだったわ」

シリウスはポケットからラブレターと思しき一通の手紙を取り出してニヤリと笑うとそのままふらふらと軽い足取りで医務室を出て行ってしまった。仕方ないからいやいや身体を起こしてベッドから降りた。…ルシウス先輩に、私から会いに行くこともできるようになった、訳だけど…。

「まあ、少し外でも散歩したら気分転換くらいにはなるかもよ?」
「そうだね!久しぶりに外に行きたいかも」

リーマスの優しい笑顔は私の緊張をすこしほぐしてくれる。みんなが優しくて本当に良かった。これでだれも慰めてくれるような人もいなかったら…と思うと恐ろしい。グリフィンドールの私がルシウス先輩のことをこんなに好きでも、そんなことなんて気にもせずに仲良くしてくれるみんなは本当にグリフィンドールそのものだと、思う。校庭に出て話していると周りの視線をヤケに感じる。やっぱり暫くいなかったから色々噂になってるみたいで、こういう噂は本望じゃない。

「あ、リリー、あとでノート見せてほしい」
「もちろん、バッチリよ!」
「僕のもいる?」
「ジェームズがまじめにノートとってるとは思えないんだけど?」
「いやいや、##name_1#のために割とがんばったつもりだけど」
「そ?なら見せてもらおっかな」

他愛ない会話がいまは何よりの気休めになる。一人でいるのは結構辛い。暫く外に出なかった間に季節は冬になっていて、冬の空気が鼻を通った。ああ、新作のコートでも買いにいって気を紛らわせようかな。暫く話していると空から雪がちらほらと降って来た。

「初雪だね」
「寒いの、キライ…」
「そうね、病み上がりだし。帰りましょうか」

雨の日のことを思い出した。雨を好きになったといってくれたルシウス先輩。あの優しさはもう手に入らないんだ。やっぱり私は雪が嫌い。これから毎年雪が降る季節になる度に、きっとこの事を思い出す。





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