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聞いたときは、思わず舌打ちをしたから周りにいた取り巻きたちがビクッと震えた。とりあえず当事者であるスリザリンの生徒3人を呼び出して二度となまえに近づくな、と冷たく言った。その後暫く一人になりたいと言ったら談話室から人という人がいなくなり、暖炉の前に座りぼんやりと考えていた。なぜこんなに自分は怒っているのだろうか。ただの作り物の彼女になれと言ったのは自分なのに、そこにはなんの感情だってないはずなのになんでこんなに私がイライラしなければならないのか。なまえに会うのはその気持ちの整理がついてからにしなければ傷つけてしまいそうで怖かった。
利用するだけするつもりだったのに、それすらもためらうほどに純粋な瞳で見られる。グリフィンドールのくせにやたらと私になついている、不思議な存在。そこには寮の名前なんてまるで存在しないかのように時折感じることがある。そんなこと今まで考えてみたこともなかったのに、そこではだんだんと頻繁にマルフォイの名もスリザリンの名もすべて必要がないかのように消えてしまうようになっていた。

「ルシウス先輩」
「…なんだ、今私は機嫌が悪いぞ」
「僕もです」

振り向かずともそこにいるのはレギュラスだった。正直に言って今は彼の相手をするいつものような余裕はない。ただあるのは焦りといらだちと知りもしない感情への少しの恐怖だけだ。恐怖といっても逃げたくなるようなものではない、ただのブラックボックスだ。私が振り向かずともレギュラスは話を勝手に続ける。

「さっき、なまえ先輩のお母さんが来てました」
「…そうか」
「先輩のお母さんは、純血主義が大嫌いなんです」
「…」

その言葉がなぜが深く突き刺さる。決して相容れない存在なのかもしれないと思った途端、胸の奥が落ち込んだ気がした。

「さらに今回のスリザリンの生徒の件。ますますスリザリンはよく思われないでしょうね」

「たまたま立ち聞きしちゃったんですけど、なまえ先輩のお母さん、なまえ先輩に良い人を見つけたみたいでした。僕は、それが先輩の幸せになるなら手を引きます」

「でも、ルシウス先輩の身勝手さにこれ以上なまえ先輩が付き合わせられるのは見てられません」

私が黙ったままでも、行き場をなくした後輩の気持ちは一方的に私にぶつけられる。ルシウス・マルフォイに対する彼の態度をここまで強くさせるのがなまえ・みょうじへの彼の思いな訳であり、その真剣さに対して思うところがないわけでもない、が…。

「中途半端なのは辞めたらどうですか」
「…どういうことだ」
「なまえ先輩の気持ち、遊んでるってことですよ」
「…」

どう答えていいかわからない。でも、そうだ、彼女の私を見る瞳、表情、声、仕草。何も気付いていない訳ではない。思えば最初からすべての行動にそれをつきあわせていく事も何事もない作業に思われた。それでもにわかには信じがたい、いや信じたくない、そんな気持ちもあるわけで邪魔をする。

「なまえ先輩は気にしていないだけでしょうけど…ルシウス先輩となまえ先輩が付き合ってることを、良くないと思ってるグリフィンドールとスリザリンの生徒だってたくさんいるんですよ?そのことでなまえ先輩に危害が及んだっておかしくないんです。真剣に考えてください、僕の望む事はなまえ先輩が幸せになることです。目先の幸せじゃなく、ずっと。永遠にです」

レギュラスの言葉に頭が痛くなってくる。それでも反論できないのは、少し続きが聞きたいからだ。どれほどまでにレギュラスが彼女を思っているのか。そして、それを聞けば私の気持ちも少しは目に見える形になるかもしれない。けれどレギュラスは何も答えない私に何か思うところがあったのか、失礼しました、の言葉を残して階段を登っていく音と共に消えてしまった。そうか、私は…。また頭が痛くなって、小さく溜め息を吐いて目を閉じた。どうすればいいのかはわからない。どうしたいのかも、わからない。…いや、わからないフリをしている自分を認めようか。





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