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「ねぇ、なまえ、お願いっ。一生のお願いっ!」
「えーまたぁ?」

私の数少ないスリザリンでの友人に、これで今年何度目かになる一生のお願いをされている。今日のお願いはグリフィンドールの談話室に入れて。彼女はグリフィンドールに好きな人がいるそうで、どうしても談話室に入りたいらしい。それって、もうストーカーの域じゃない?

「まぁ、いーけどさ。バレないようにしてよー?」
「うん!ありがとうなまえ、大好き!」
「当たり前でしょ、この私の美貌を嫌う人なんているわけないんだから」

鼻高々な私の言葉を彼女はいつものように聞き流し(ちょっと酷いよね)、トイレで制服を交換して合い言葉を教えた。ホントはまずいことなのは重々承知してるけど、まぁ好きな人のためにはなんでもしたいって気持ちちょっとわかるし、あのコは合い言葉を言いふらしたりするような悪いコじゃないから、きっと私の美しさに免じて許してもらえると思う。

「じゃあ1時間後にまた、トイレでねー!」
「うん、迷わないでね。太った婦人だよー」

でもね、思うんだけれど、こんなに美しい私が目立つようなところを歩いて、しかもスリザリンの制服を着ていたらすぐにだれもが振り向いてしまうと思うのよね。どうしたものかと迷った末にあまり人のこない地下へ行くことにした。にしてもルシウス先輩とおんなじ制服とかっ、ちょっと嬉しい!なんて浮かれていた、その時だった。

「捕まえた」
「…!?」
「もう逃がさないよ」

え、な、何なに?誰?気配もなくいきなり後ろから抱きしめられて驚いて硬直する。声もでない。あ、なんかすっごくいい香りがする。誰だろう、でもとりあえずヤバいことになった。男の人なのは分かるけど、人によっては非常にまずいことに…。どうしらを切ってごまかすか、シリウスの悪戯でスリザリンの制服になってしまった、とでも言えば良いかな…?

「ん?どうした?」
「っ…」

あんまりにも耳元でその人がささやくから、恋愛経験が意外にもゼロな私はいやいやとただ首を左右に振ることしか出来なかった。どうすればいいのかわからずにただその人の心地よい声に支配されていく。

「今更恥ずかしがる必要などないだろう?」
「あのっ…」
「なんだ」
「人違い、です……」

もう限界、意を決して首だけで振り返って、私は目を見開いた。嘘、そんな、え、ちょっと待って。どうすればいいの。急に身体中が熱くなって、心臓がばくばくと音を立てる。まさか私を抱きしめていたのがルシウス先輩だったなんて。

「…」
「…」

お互いに沈黙。ルシウス先輩も動かなかった。見つめ合う事数秒、それが私にはお約束の通り永遠より長く感じるのだが、バシャッという音と強いフラッシュで我に返った。音の方を見ればだれかの後ろ姿。

「…撮られたな」
「えっ」
「…名前は?スリザリンの生徒か?」
「え、いえ、あの…ご、ごめんな、さい」
「いや人違いしたこちらも悪かった」

ルシウス先輩は私を離すとはぁ、と溜め息をついて髪をかきあげた。う、わぁ。かっこいい。どうしよう、もう、ずっと憧れてた人が目の前にいて私を見ているってこんなに緊張するものだったんだ。

「あの…先輩」
「なんだ」
「ごめんなさい、私、グリフィンドールなんです、ほんっとうにごめんなさい!」

ばっと頭を下げて、泣きたい気持ちでネクタイを隠して走った。どうしよう、絶対絶対、迷惑かけた!嫌われた…さよなら私の秘密の恋心。元々叶う予定もなかったけど、こんな終わり方もないんじゃない?





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