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18

「疲れたな」
「お疲れ様です」
「なまえは疲れていないのか?」
「ああいうの嫌いじゃないので」

むしろ楽しかったし。ルシウス先輩は胸元のタイを緩めると夜風にあたりながら溜め息を吐いた。去年の今日なら絶対にありえないこと。ルシウス先輩のこんなにすぐ傍に私が立っていて、ルシウス先輩が私の名前を呼んで私に話しかける。

「あ、先輩と写真撮りたかったな」
「どうせだれかから後で貰えるだろう」
「確かにそうですね」
「お前はなぜそんなに私に懐いているんだ?」
「えっ」

ルシウス先輩の不思議そうな顔が私に向けられる。その言葉に刺はないからショックではないけれど、純粋な好奇心にこそ応えにくかったりするものだ。

「嫌われてもおかしくないことばかりしていると思うが?」
「え…!そんなことないですよ!テストのときだって優しかったし…いつも私のこと気遣かってくれて…」
「私がグリフィンドールを馬鹿にするときお前はいつも傍にいなかった」
「あ…」

シリウスたちとルシウス先輩たちがいがみ合うとき、私は無意識にも近くそこを避けていた。自分勝手なエゴだといわれても仕方ない。でもグリフィンドールをけなすルシウス先輩なんて見たらショックを受けない訳がなかったし、ルシウス先輩の視界にそんな時に入ってしまうのは嫌だった。だから本当にルシウス先輩を好きでいて良いのか悩むことだって多かった。私はグリフィンドールもそこにいる皆も好きだから。でも今ははっきりと言える、ルシウス先輩は実は結構優しいひとだし、私の好きな人なんだって。

「で、でも私は先輩のこと見てたんです」
「あまり記憶にないが」
「うぅ、やっぱりそうですか」

アピールしてこなかった自分が悪いわけであり自業自得だといわれればそれまでなんだけど。でも自分で言うのはアレだけど、私くらい美しくて有名だったらいやでも目に入ると思うんだけどなぁ。ルシウス先輩は私のことまったく知らなかったんですか?と聞いてみると意外にもあっさり知っていたと言われた。

「ほ、ほんとですか?」
「あぁ。お前が入学した時からな」
「えっ」
「可愛い新入生がいると評判だった。…その頃は興味もなかったが、こうなるとはな」

興味もなかったが。その言葉にすこしショックを受ける。私はルシウス先輩を見た瞬間に恋に落ちたというのに、現実なんてこんなものか。いやいや、でも今のこの状況!文句ばっかり言ってたら罰が当たる。

「だが…後悔はしていない。お前といるのは悪くない」

立ち上がりながら言ったルシウス先輩の表情はこちらからは見えなくて、かわりにこの赤い顔も隠すことができるからこちらには好都合だけど、少し先輩の表情を見てみたい気もする。ルシウス先輩の広い背中を見ているとつい抱き着きたくなってしまう、なんて。恋人同士でもないのに。





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