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この間から結局ルシウス先輩に告白出来ていない。完璧にタイミングも勇気も失ってしまった。窓の外を見ながらぼんやりと考えていたら雨だな、と隣で声がして目をやればルシウス先輩がいた。いつの間にいたんだろう。小さく微笑みかけると笑顔が返ってくる。だけどそれは…本当の笑顔じゃないのかなぁ。

「雨は嫌いだ」
「なんでですか?」
「特に理由はない。そういうものだろう?」
「私は好きですけど」
「珍しい奴だ」
「だってなんか、いつもと違う景色に見えるし…」

歩き出すルシウス先輩に慌ててついていく。目的地はわからない。ルシウス先輩の気の赴くままに。擦れ違う生徒からはきらきらした羨望の眼差し。ルシウス先輩のきれいな銀のプラチナブロンドと私の金のキャラメルブロンド。並んで歩く私たちはどんな風に見えてるのかな…。

「それに雨がなくちゃ花もさかないですよ」
「それは一理あるな」
「この間買った傘がすごく可愛いから使いたいし」
「そうか。では逆に嫌いな天気はないのか?」
「…雪」
「雪?」
「寒いの苦手なんです。しかも雪は滑るし……」
「雪か…嫌いではない。少なくとも雨よりはな」

ルシウス先輩はふふんと笑う。雪の中のルシウス先輩…少し鼻が赤くて、吐く息も雪と同じくらいに真っ白で、そんな真っ白な世界に佇むルシウス先輩。想像すればそれはとても儚げで美しいけれど、でもそれを近くで見るのは…とっても寒そうだ。想像するだけで身震いできる。ルシウス先輩の足が止まって、着いたのは外へ出る大きな扉の前。

「ルシウス先輩?」
「外のベンチまでゆっくり散歩でも…と思っていたんだがな」

やれやれとでもいうように両手を挙げてユーターンして大広間の方向へ足を向けるルシウス先輩のローブの裾を思わず掴むと不思議そうに振り返られる。あ、その表情は初めて見たかも。また好きが積もった。

「先輩、雨、もう止みますよ。ほら」

雨の音が小さくなって、すこし扉の外に出れば雨はもうほとんど降っていなくて替わりに雲がどいて太陽が顔を出した。陽の光に照らされる私とルシウス先輩。

「だから雨が好きなんです」
「なるほど?」
「雨あがりの空気おいしいし、校庭も歩きづらいけど綺麗だし…」

水を得て潤う芝生は微かに夕陽に輝いて、雨上がりにしか味わえない新鮮な空気に肺が満たされる。ルシウス先輩を振り返ると小さく微笑まれて、あ、さっきと一緒、って私も自然に頬が綻ぶ。

「それにほら、ルシウス先輩、虹です!」
「あぁ」
「雨がなきゃ晴れも虹もないかなって、思うから。好きなんです」

私のルシウス先輩への思いも、いつか晴れ上がる日がくるのかな。もう今は遠くから見ているだけじゃ満足出来ない。また少しずつ勇気を貯めて、告白しよう。そう決めた。

「そうか。私も雨が好きになった」
「!」
「雨上がりのデートも悪くない」

ルシウス先輩の差し出す左手に右手を乗せて、歩き出す。本当の先輩はきっと優しい人なんだと、心から思ってしまう。これも恋は盲目…なのかな。





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