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モヤモヤと嫌な予感が収まらない。なんだこの感覚は。二人が別れることを望んでいたはずなのに、なんでこんなに不安なんだろう?なまえ先輩の言っていた言葉を何度も繰り返し考えてみるけれどやっぱり言葉の真意は掴めなくて、今までの二人の経緯を考えてみてもそれはよくわからないし知りもしない。難しい顔をしているからか今日はあまり人に話しかけられないまま夕食の席まで来てしまった。遠く離れた席に座っているなまえ先輩の横顔を見つめていると、先輩は固い顔のまま立ち上がり、スリザリンのテーブルに向かってくる。もしかして今からなのか?そうしてルシウス先輩に声をかけて二人は広間を出て行ってしまった。……。

「ご馳走さま」
「え、もう行くのかよ?」
「お腹の調子が悪い。先に戻ってる」

何食わぬ顔で立ち上がりローブを纏って早足で広間を出る。少し遠くに見える二人の後ろ姿。悪いと思いつつも角を曲がった二人を追って影に隠れて息を殺す。

「あの、ルシウス先輩」
「どうした?そんなに固い顔をして」
「先輩はいつも私に優しいです」
「彼女だからな」
「でもそれは…それは偽じゃないですか」
「…まぁそういうことだな」

え、偽?どういうことだ?頭がぐるぐるしてきた。フル回転させて考える。なまえ先輩の朝の発言はそういうことだったのか。それよりもルシウス先輩の少し渋ったような声音が気になった。

「…婚約者の件は順調でしょうか?」
「まぁそれなりにな」
「自分勝手だとは思うんですが…」
「なんだ」
「あの、実は私、ずっと前から」

だめだ、違う、聞きたくない。聞きたくないし、それはダメだ、なまえ先輩の気持ちがルシウス先輩に伝わったら、ルシウス先輩の後輩である僕にはわかる、ルシウス先輩は間違いなくなまえ先輩をそのまま本当の彼女にしてしまう。この間の夜の態度に今の声のトーン、ルシウス先輩だってなまえ先輩が好きなはずだ。杞憂ならどれだけいいか、

「なまえ先輩」
「!」
「…レギュラスか」

ゆっくりと曲がり角に出た。驚いた顔で振り返るなまえ先輩と、小さく僕を笑うルシウス先輩。

「なまえ先輩が好きです。ずっと前から」
「え」
「弟のように思われてるのは知ってます。だからこれから、考えてくれませんか」

自分でもなんてあほらしいことを言っているんだと思ったけれど、こうするしかなかった。残されている時間は予想以上に少なかったみたいだった。






あきゅろす。
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