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私は頭さえ良ければ完璧なのになぁといつも思う。そうシリウスに言ったら鼻で笑われ、リリーに言えばそんなのなまえじゃないわと真顔で言われた。いつも試験前は皆にお世話になってるから、頭上がらないけど!
「なまえ」
「はい!あ、ルシウス先輩!こんにちは」
「今日の夜は行くのか?」
「え、あ、」
何かあったっけと必死に思い出そうとする私に先輩はスラグホーンの夕食会、と言った。そうだ、あれルシウス先輩も誘われてるんだよね。ってそりゃ当たり前か、ルシウス先輩だもんね。私は今まで散々誘われているが何かと理由をつけて実は一度も行ったことがない。ルシウス先輩はたまに行っているらしい、さすが。
「今日はちょっと…テスト勉強しなくちゃで」
「もう始めるのか」
ルシウス先輩が驚いたように少し眉をあげて私を見る。そんなに意外ですか!ルシウス先輩は頭も良いから、テスト勉強なんてまだ始めなくていいんだろうな、羨ましいな。
「私頭悪いのです」
「まぁ良い心がけだな」
「だから暫くあんまりお話できないかもですが…ごめんなさい」
「ならば話は簡単だ」
「?」
「教えてやろう。スラグホーンのところはなしだ。夕食後迎えに行く」
「えっ」
「じゃあまた後で」
その真意を確かめようと口を開きかけたけれど、ルシウス先輩の取り巻きが現れてルシウス先輩を連れて行ってしまった。どういうこと、最近ルシウス先輩がなんだかやたらとドキドキさせてくる…と思ったけれど、考えてみれば出会ってからずっとドキドキさせられてるや。
「魔法薬学が、ちょっと苦手で」
「ちょっと、か」
「…いえ、大分、です」
ルシウス先輩は私のノートを見て溜め息を吐いた。やばいやばい嫌われる。私のノートはといえばだいたいのページが私が有名人になったとき用のサインの練習でうめつくされていて、本来のノートの部分は申し訳程度にメモってあるだけなのだ。
「なんだこれは、自分の名前を忘れたときのためか?」
「いえ、将来ビックになったときのためでして」
「少しは真面目なところもあると思ったが、思い違いだったようだな」
「すいませんすいませんすいません」
ルシウス先輩は呆れ顔。嫌われちゃったかな、まともに先輩の顔を見れずにノートを捲っていると頭にぽんとノートが乗せられた。びっくりしてルシウス先輩を見ると、貴様にやる、と一言。
「えっ」
「私の昔の魔法薬学のノートだ」
「そんな、ルシウス先輩が困るじゃないですか」
「そんなものもう頭に入っている。やるからには最高の成績をとるんだな」
え、うわ、ちょっと待って。どうしようこれ、なんだか泣きそうな私を見てルシウス先輩は小さく笑う。やめて、これ以上好きになったら私虚しいじゃないですか。大事にしますと小さく捻り出した声もきちんと隣のルシウス先輩には届いていて。無理矢理笑ってみせたけど本当はもう辛くて仕方ない。気持ちに嘘はつけないね。
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