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バカみたいに甘いのがいい
私には好きな人がいる。
その人は同級生のお父さんで既婚者。
なのにその人の事ばっかり、ずーーーっと考えていて。ドラコなんてどうでもいいのにルシウスさんの事はずっと頭の中にあって。だから、こういうの迷惑なんだな。

「初めまして、なまえさん。ホグワーツに着いた瞬間から貴女の美しさに夢中です。俺と踊ってほしい」
「えぇ、すいません、大変申し訳ございませんが私は踊る気がありません」

私の態度に呆気に取られたようにそのダームストラングの生徒は差し出した手を下ろさずに目をパチクリさせている。そんな彼ににっこりと微笑んでスカートの裾を持ち上げてお辞儀をした。はい、さようなら。

「ちょっとなまえ、本当に誰とも踊らないの?」
「何のために?誰と?」
「今の人だって平均値以上じゃない!残りのホグワーツの男たちよりずっとマシよ!」
「そうかしら」

友人の忠告にはハイハイと生返事。ふぅとため息をついて、後ろを振り返ると数名の男子生徒がわざとらしく視線を逸らした。確かにわかる。ホグワーツ内ではだいたいのカップルがあるべきところに収まっだという感じだし、ボーバトンの女の子は勿論大人気。残ったホグワーツ女子に声を掛けたがる男子は多い。
にしても、なんて罪作りなイベントなんだ。泣いている女の子、略奪を企てる生徒たち、これすらも青春の一ページだというのか。残酷だ。

「はぁ…。ドラコはどこ?」
「呼んだか?」
「あぁすぐそこにいたのね。ねぇルシウスさんはダンスパーティー出ないのかしら」
「なぜお父様が…。出る訳ないだろう。頭を冷やせよ」
「相変わらず厳しいわね。私も一応スリザリン生よ」

勝手に蝶ネクタイに改造した銀と緑のストライプのかつてネクタイだったものをアピールすべく引っ張ってみせると彼は苦笑した。息子なんだから、ルシウスさんを呼んでくれればいいのに!

「毎日毎日誘われて疲れちゃうわ。ルシウスさんが誘ってくれればそれでもう解決なのに」
「父上はお前を誘わない。父上の好みは」
「あなたの母上自慢は聞きたくないわ!マザコン」
「な、ぼ、僕がマザコン?!」

わぁわぁ喚くドラコを放置して前を向いた。あーあ、ダンスパーティー、か。実際ドラコの言う通りだし、夢なんて見ずに適当なところで妥協すべき…なのかな。




ダンスパーティーが近付いて皆が焦っているのはわかるんだけども。今日だけで四人目、はさすがにまいった。

「パートナーはいないんだろう?」
「えぇ、まぁ…」
「だったらどうかな、退屈はさせないよ」
「そうね…」

スリザリンの変わり者である私を誘ってくれるホグワーツ生なんていないし。ここらで手を打とうかな、ダンスパーティーのご馳走は気になるしね…。彼の手を掴もうかと手を伸ばそうとすると後ろから待たせたね、という声と共に手を絡ませられた。

「寒かったろう?」
「っ、え、えっ?あ、…えっ?あの、ルシウス、さん?」
「すまないが、少し良いかな。久しぶりに会えたから2人で話がしたいんだ」

言いながら、ルシウスさんは彼に見せつせるように2人の指が絡み合った手を少し上げてみせた。ダームストラングの彼は驚きすぎて言葉もでないようで両手を挙げて首を振りどこかへ行ってしまった。口をパクパクさせる私。

「元監督生として、校則違反は感心しないな」
「す、すいません、すぐに戻します」
「冗談だよ。可愛いね」
「ル、ルシウスさん、あの…ここで何を」

ルシウスさんは私の蝶ネクタイを直しながら優しく微笑む。いや、待って。こんな事ってあるのだろうか。学校にルシウスさんが来ること自体とても久しぶりなのにこのタイミングでここに現れてこんな風に私に、いや私のネクタイを、可愛い、って。

「あ、あの。ありがとうございました」
「私と踊りたがっていると聞いたから」
「!ド、ドラコからですか?!」
「いいや、ミス・パーキンソンから」
「むうう」

パンジーめ、余計なことを。じゃあたまたま今日学校に何かの用事で来たルシウスさんがたまたまパンジーに会ってたまたまパンジーのせいでこんなことになったのか。ルシウスさんは1人で悩む私を見て笑う。

「私がなまえと同い年だったら、絶対になまえをパートナーにしていたよ」
「え!!!」
「なまえ、私以外にもうパートナーがいるとは言わせないぞ」

「、とね」

ルシウスさんは悪戯に笑う。
これが大人の余裕ってやつなのですか、両手を掴まれて真剣にそんな風に言われて私は腰が抜けそうです。学生だったルシウスさんは実は見たことがあったりする。飾ってある古い写真に載っていた。あの容姿でそのセリフは反則でしょう。

「ルシウスさん、あの、無理を承知で、好きです、大好きです、もう本当にルシウスさん以外好きになれません」
「卒業しても同じ答えなら考えてみよう」
「っ、ほ、ほんとですか!」
「嘘はつかない。なまえにはね」

ルシウスさんは悪戯にウィンクすると私を寮まで送り届けてそのままいなくなってしまった。ああ、決めた、私ね、ドラコ!

「お母さんになるからね…!」
「…はぁ?何を言ってるんだ。気持ち悪い」





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あきゅろす。
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