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終わりの始まり
ルシウスさんを初めて見たとき、好みのタイプすぎて声が出なかった。人生で初めて見惚れたものは壮大な景色でも有名な絵画でもなく、嫌いな同級生のお父さんだったのだ。

「え、ねぇ、あれ誰」
「なまえったら知らないの?ドラコのお父様、ルシウス・マルフォイさんじゃない。ルシウスさーん!」
「やぁパンジー…と、そちらのお嬢さんは?」
「え!えっと!私なまえって言います!!!」
「なまえはドラコととっても仲が悪く…もが」
「何言ってるのパンジー!ドラコくんとはいつも仲良くしています!」

パンジーの口を光の速さで塞いで笑顔を浮かべた私にルシウスさんは笑いかけて、これからも宜しく頼むよと言った。ちょっと待って、イケメンすぎる。なぜ?なぜよりによってこの人がドラコのお父さんなの?待てよ、ということはルシウスさんは子持ちなの?頭の中をたくさんの疑問が埋めた。それは三年経った今も同じ。


「ルシウスさん学校来るの?今日なの?本当なの?」
「何度言えばわかるんだ、来る。時間は知らない」
「そうなの、わかった」
「なんでお前が僕の父上をそんなに気にするんだよ。金は貸さないぞ」
「はーーー?!なんでわたしがルシウスさんにお金の融資を頼むのよ?!アホなんじゃないの?!?」

ドラコといればルシウスさんと会いやすいのではないかと思い、ドラコにつきまとっている今日。仲は相変わらず悪いが背に腹は変えられない、からね!しかし次の授業は残念ながらドラコとは別なのだ、本当に本当に残念だ、今日だけは。パンをかじりながらふらふらと遠い教室への道を歩いていると、なまえ、と声をかけられた。こんな渋い声の先生、いたっけ?と振り返ると、やっぱりイケメンすぎて私は見惚れてしまった。

「ル、ルシウスさん」
「久しぶりだね」
「お、お久しぶりです、あ」

ルシウスさんの視線が私の手にいくのが分かった。名門マルフォイ家からしたらそれはそれは歩きながらパンを齧るなんてとんでもない行為なのでは!焦ってパンを隠そうとする私の手首を掴むルシウスさんに少し戸惑う。

「あの…?」
「ありのままの、なまえ、君に興味がある」
「え?」
「ドラコとは仲が悪いんだろう?」
「え、えー?!そ、そんなことないですよ?!?」
「ドラコに聞いたよ。成績はあまり良くないとか」

ドラコめなんてことをルシウスさんに吹き込んでるんだあの野郎あとで怒ろう。ルシウスさんは私の反応を見て楽しんでるみたい、すこし腰をかがめて私の顔を覗き込む。当たり前だけど皺とか、あるわけで、なのにそれがまた良い雰囲気を出すのに一役買っている、わけで。ホグワーツには似合わない、恐ろしい程静かな空間がそこにあった。

「ドラコと仲が悪くても、私と仲良くなる事は出来るはず」
「えっ…」
「どうかななまえ。この危険な賭けに乗ってみるかい?」

ルシウスさんはそれだけ言うと私の持ったままのパンを一口かじる。ご馳走様、と笑うと私の手首を解放した。また頭がついていかない、私の頭はルシウスさんの格好良さを受け止めるだけで精一杯なのに、なのに。返事は次会う時に、と私に背を向けるルシウスさんの手首を今度は私が勢い良く掴んだ。

「あの!」
「もっとよく考えなくて良いのか?」
「…勿論です、もっと仲良く、なりたいです!お願いします!」

その時のルシウスさんの笑みはとってもとっても嫌らしくて、邪悪で、なんで親子なのにドラコにはこの狡猾さが無いんだろう、と不思議になった。ドラコにも絶対内緒の、ルシウスさんと私の危険な関係のはじまりはじまり。


(20130904)

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