だから今は、このままで。 「うううう、マスター、もう一杯!」 「もうやめておけ」 「やってられるか、畜生」 「全く…」 もう一杯!なんていったところで、バタービールじゃぜーんぜん酔っ払えないのが辛いところ。今日の私は荒れている。理由は三回目の失恋! 「どうして私じゃダメなの?こんなに好きなのに…」 「今回は何と言われたんだ?」 「スリザリンの人とは合わないと思うって、そればっかりー!うわあぁああ」 「私にもハッフルパフの男とお前が釣り合うとは思えん。全く同感だ」 「なんで?なんでスリザリンていうだけでダメなの?私もハッフルパフが良かった!レイブンクローとかなんか可愛いイメージあるし!ああぁあ」 一年生のときに一目惚れした、ハッフルパフのイケメンくん。初めて告白したのは三年生のとき、溢れる思いを止められず。振られて一年経っても諦めきれず、四年生の時も告白。ふられて、今度こそ諦めようと思ったのに、監督生を黙々とこなす彼の姿にまた心を奪われて再度告白。また駄目だった。五年間も好きでいると、もうなんていうんだろ、意地とか惰性もあるけれど、とにかく諦めきれないんだもん、好きなんだもん。 「ルシウス、惚れ薬…調合してよ。ルシウスならなんでもできるでしょ?」 「余計虚しくなるぞ」 「ああぁぁあ確信をついているうぅうぅ」 ルシウスのこういうところが好き。励ますのでもなく哀れむのでもなく、隣で淡々と何考えてるかわからない顔して事実だけを伝えてくれる。だから失恋したときはルシウスと飲む。遊ぶ。それがまたハッフルパフの彼的には疎ましいところなのかもしれないけど、悪名高いルシウスとつるんでるなんてさ。でもスリザリン生はルシウスを嫌いにはなれないんだよ、何故かはわからないけどね、それがルシウスの人柄なのだ。となまえはたまに思う事がある。 「…はぁー、ルシウスはいいよねぇ」 「何がだ」 「こんっっなに性格悪いってホグワーツ中に知れ渡っててスリザリンの癖に顔が良いからモテるしさ、どんな子だって両思いになれるんじゃん!男だからスリザリンでもちょっとワルな雰囲気が出てプラスされるしさーっずるいずるい!」 「…そんな事はない」 「嘘だ!いつも女の子といるもんっ」 「そうだな。想いが伴わない関係は気楽だから始まりやすいし終わりやすい、それ故にまた次も手に入りやすい、それだけの話だ」 「それ、モテるから言えるセリフだから」 理屈を並べ立ててくるルシウスにがみがみと説教したり、グチったり、三回も振られてまだ諦めきれない自分が情けなくて泣いたりしているうちに疲れていつの間にか寝てしまった。でも気付いたらいつも寮のベッドで寝てるから、ルシウスといる時はいつもこうなるんだけどもね。 「セブルス、手伝え」 「またなまえ先輩ですか?」 「そうだ…全く、油断しすぎたぞこいつは」 「相手がルシウス先輩だから、ですよ」 「…私にも、叶わない恋くらい…ある」 「…伝えないんですか?なまえ先輩に」 「言える訳ないだろう、私以外の誰がこいつの愚痴を聞けるんだ」 そう言いながら無意識に幸せそうな顔で笑うルシウスに、先輩と大人を感じるから、セブルスは他寮生から見たらただ威張っているだけに見えるこの人にスリザリンの誰もが逆らえないのだと知っている。 だから今は、このままで。 (20130410) *# |