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好きじゃない、もっと好き!

私はお兄ちゃんが大大大好きで、お兄ちゃん以外の男の人をどうこう思ったことなんてない。お兄ちゃんはホグワーツにはいないけど、その事は周知の事実のはずだったのに!

「ルシウス先輩」
「どうした?なまえ」
「どうして私はルシウス先輩の膝の上に乗ってるんですか!」
「勝手にお前が乗ってきたんだろう」

ルシウス先輩はわめく私に溜息をつくと読みづらそうに手にしていた本をパタンと閉じた。ゆるゆるとした空気が漂う昼下がり、校庭の一際大きな木の木陰に二人きり、周りには生徒はいない、否、寄ってこない。私が1人でここにいても誰も気にすることはないのに、ルシウス先輩の影響力っていったい…。

「違います、私はこの場所が好きなんです」
「知っている」
「いつもここにいるんです!なのに…」
「知っている。お前がお兄ちゃん、しか好きじゃない事もな」
「ん…」

ルシウス先輩は眉を潜めて嬉しそうに笑うと私の髪の毛を一束掴んで強引に引き寄せた。血の気のない先輩の唇もやっぱり触れてみたら温かい。悪魔みたいな名前をしてても、人間なんだな、ルシウス先輩って。まだ慣れないキスの感触が恥ずかしくてぼーっとしてどうでもいいことを考えている私をおいて、ルシウス先輩はまた本を開く。

「うぅ、悔しい。ルシウス先輩なんてお兄ちゃんにぜんぜん似てないのに」
「ほう」
「お兄ちゃんはもっと優しくて、私のことしか見てないもん!」
「それで?」
「かっこよくて、頭も良くて…とにかくルシウス先輩なんて嫌いですっ」
「大好きなお兄ちゃんにぜんぜん似てない、嫌いな男の膝に乗ってキスをされても抵抗しない、か」
「…」
「もうお終いか?」
「…だって…」

ルシウス先輩は意地悪すぎる。私はルシウス先輩が好きなんじゃない、ただルシウス先輩の膝の上は心地よくて、たまにしてくれるキスも、今まで知らない胸の高鳴りを感じるからすこし好奇心がわいただけ。男の人として見ている訳じゃない…なんて直接言えるわけない。だってこんなの…ただの言い訳に聞こえちゃうじゃん。

「まぁ素直じゃない女は嫌いじゃない、ただそのうち飽きるがな」
「えっ」
「先に進みたかったらたまには素直に言ってみろ」
「ル…」
「…」

黙って私を見る先輩の表情、想像できるでしょ?すごくすごく愉しそうで、自信に満ち溢れているの。この人って失敗するとか、迷惑がられる、とかそんな事考えたことないんだろうな。

「ルシウス先輩の膝の上が少し心地よくて、キスもドキドキするだけで、別に先輩のことが好きなわけじゃありません。言い訳とかじゃありませんから!」
「そうか。言い訳じゃないなら告白に聞こえるが」
「ちが…」

最後まで言えなかった理由はもちろん、大好きなお兄ちゃんがくれるチョコレートよりも甘いものをルシウス先輩がくれたから。初めてこの人に失敗、とかザセツ、というものをプレゼントしたかったけど、どうやら私には無理らしい。




(20130410)



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あきゅろす。
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