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みえないきえないゆるがない

バレンタインデーというイベントにあまり興味がない私は浮かれる校内の雰囲気がなんとなくイヤで1人になれる場所を探していた。そしたらルシウス先輩が山ほどのチョコレートを抱えて見たことない扉を押していたからこっそりと後ろから近付いて中へはいる。

「ルシウスせーんぱいっ!」
「!!」

大きく肩を揺らして後ろを振り向きながら派手な音を立ててチョコの山を床へ落としたルシウス先輩は相手が私だと分かるとなんだ、と溜め息を吐いた。なんだ、その感じ。すこし不満そうになる私にルシウス先輩は気付くこともない。驚かせてしまった罪悪感からチョコを拾おうと腰を屈めるとルシウス先輩に片手で制止される。

「良い。拾うな」
「え、なんでですか」
「元々ここに置いておくつもりで来た。もう用はない」
「え、それってつまり…」

この部屋がどこか知らないけれど、うず高く積まれている古びた教科書や無造作に床に転がっている壊れた箒なんかを見るところどうやら綺麗に使われている部屋ではなさそうだ。捨てるということですか?と聞くと当然と言わんばかりの視線を寄越されて、まったく関係ないはずなのに胸の奥がちょっときゅっと痛くなる。

「だからバレンタインには興味ないんですよ…」
「ほう?ということは?」
「…そんなことより、これ何の部屋なんですか?こんなところに部屋なんてありましたっけ?」
「そうだな、普段はない」
「普段は?」
「必要とする者の前だけに現れる。なまえ、君が必要とするものは?」

ルシウス先輩が私の背中をぐいぐい押して私を部屋から押し出すと、扉は何時の間にか消えていて、驚く私の目をルシウス先輩はその大きな片手で塞ぐ。さぁ考えてごらん、その言葉に戸惑いながらも勝手に答えは出ていたらしい。視界が明るくなると目の前にはまた扉があった。ドキドキしながら片手で扉をゆっくりと押す。隣でルシウス先輩は確信にも似た小さな笑顔を浮かべていた。

「…これが私に必要なものですか?」
「ああ、どうやらそのようだな」

ただっ広い部屋はさっきとは随分違って真ん中にぽつんと小さな机が置いてあるだけだった。恐る恐るその机に近付くとその上においてあったのはキレイにラッピングされたチョコレートの箱。しかも丁寧に宛名までついて。

「これは君からの気持ちと受け取っても良いのかな、なまえ?」
「…う、な、なんですかこの羞恥プレイ…」
「好奇心とは時に思わぬ弊害を産むものだ」

ルシウス・マルフォイと書かれたそのチョコレートを手にして満足そうに笑うルシウス先輩にやっぱり私は勝てなくて、どうせそのチョコレートも捨てるくせに、なんて可愛くない言葉がつい口をついて出る。その言葉に答える代わりにルシウス先輩は私の顎をくいと持ち上げて小さくなまえのがあれば良いんだよ、だから他のは、なんて言い出すものだから悔しくなって少し背伸びをしてこちらから先に唇を塞いでやった。ヤバイな、ナルシッサ先輩にバレたら殺されるかも、なんて思いながら、それでもびっくりしているルシウス先輩の表情に私は満足しているのだった。ハッピーバレンタイン、今日くらいは想いを伝えるの許してよ、告白する日でしょう?



(20120217)

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あきゅろす。
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