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とっくにキャリーオーバー

寒くてなにもない牢獄から出て来るあなたに一番に会うのは私がいいと思った。だから私が行きますといったら、帝王にはお前も嫌がらせが好きだなと鼻で笑われたけど、ほんとうは帝王は知っていると思う、私がルシウスを大好きなことを。

「なぜお前なんだ」
「さぁね」

なんてことない顔で嘘をつきながら、久しぶりに見たその顔に胸が高鳴っているのは内緒。よかった、無事で。もう会えないなんてなったらきっと私は生きていられない。結ばれなくてもルシウスがそこにいえればただそれだけでいいの。私とルシウスはだれもが認める犬猿の仲だし、妻子持ちに手だすなんてめんどくさいことはしない。

「…嘘がうまいな」
「どういう意味?」
「そのままの意味だが?」

ルシウスは小さく口の端をあげて笑う。なんだ、意外と元気なんだな。もっと弱ってるかと思ったのに。それで、弱っているルシウスが最初に会った私を強く抱きしめて離してくれなければいいと思ったのに。少し残念な気持ちでルシウスの少し前を歩いていると突然後ろから抱きしめられて思わず体がこわばった。

「な、なに?」
「分かりやすい奴だ」
「それってどういう意味…」
「そんな寂しそうにされて、抱きしめられない訳がないだろう?」
「…」

作戦と違う。寂しいルシウスに抱きしめられるはずだったのに、寂しい私が抱きしめられてどうする。いつもの私ならこんなルシウスの腕なんてすぐに振り払ってしまうのに。こんな寒い夜空の下ずっと大好きな人と2人きり、それも久しぶりの再開で私を拒ませるものなんてどこにもない。まあ、こんな願いの叶い方もありなのだろうか。

「お前の素直じゃない愛情表現にはそろそろ飽きた。私に構ってもらいたいのならば、そろそろ他の愛情表現を考えることだな」
「…減らず口。この後どんなお仕置きが待ってるか知らないからね」
「その時は慰めてくれればいいだろう」
「考えとく」

私はいつもその貴方の余裕のある姿を見つめて来た。だから、それを分かってて私には弱みを見せないルシウスにまた恋に落ちてしまうんだ。大嫌い、と小さく呟くと知っていると返ってくる、まあそんなのもまた2人だけの秘密の呪文みたいで悪くはないと思うんだけれどね。



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あきゅろす。
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