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Vampire of the point of death
Scramble!(琴音様リク・番外編)

講義を終えた帰り道、ふと薄暗い道を振り返る。

「……?」

笑い声が聞こえた気がしたのに、振り返った先には誰も、何も居ない。
只、今しがた通り過ぎて来た石畳が続いているだけだ。

「気の所為…かな?」

気の所為と言ってしまうには明瞭に聞こえたが、それでも何も見付からないのは事実。
引っ掛かりを感じながらも、僕はそのまま家路に着いた。

上空で2匹の蝙蝠がキィと鳴いたのには、気付かずに。















「如何にも貴方好みって感じね」
「…あの…」
「ああ、甘い匂いだ」

此所は僕の家の筈だけど、そうじゃ無いのではと疑ってしまう。
見慣れない光景が此所に有ったから。
見た事も無い様な美女が、当たり前の様に此所に居たから。
しかも2人。

「ふふ、かわいいのね。とても美味しそう」
「おい、いい加減離れろよ」
「何故?別に貴方のモノじゃ無いでしょ」
「貴重な食料は分け合うべきだぞ、アルヴィン」
「おたくらと分けて俺の分が残った事有ったかよ」

僕の肩に腕を掛けてしなだれ掛かり、首筋に鼻を近付けている、眼鏡を掛けた栗色の髪の美女。
僕の首に腕を回して抱き着き、髪に鼻先を埋めている、グラデーション掛かった金髪の美女。
アルヴィンと知り合いらしい雰囲気が、…と言うか、会話の内容から間違い無く。

「あの…、貴方達は吸血鬼ですか?」
「ええ、そうよ」
「ああ、そうだ」

やっぱりそうか。
くんくん、と鼻を鳴らしながら、明らかに僕の匂いを嗅いでいる。
…清潔にしている自信は有るし、吸血鬼は体臭じゃ無くて血の匂いを嗅ぐのは解っているけど、それでもやっぱり少し恥ずかしい。
それに、何度も言うがこの2人、美女なんだ。
綺麗なんだ、凄く。
こんな綺麗な人に、こんなに近付かれたら、緊張もする。

「そろそろ離せって。ジュード君真っ赤になっちゃってんだろ」
「ん?どうした、具合が悪いのか?」
「…相変わらず解ってねぇんだな」

アルヴィンが僕の手を引いて、美女2人から引き剥がしてくれる。
助かったと思ったのも束の間、今度はアルヴィンの腕に捕まってしまった。
ぎゅ、と抱き締められて身動きが出来ない。

「あ、アルヴィン…っ」
「ジュード、こいつらに構っちゃ駄目だ。淫魔だからこいつら」
「淫魔?吸血鬼じゃ、」
「人聞き悪いわね。貴方だって同類じゃない」
「俺の唾液はジュードに効かないんでね。おたくらみたいな淫魔紛いの食事はもうしないの」
「やはり男には効かなくなっていたのか」
「効かないのにこの子を選んだのね。つまり本気って事?」
「ああ、本気だよ」
「!……っ」

抱き締める力が強くてちょっと苦しいのに、離れて、なんて言えない。
僕の頬に頬擦りするアルヴィンが、本当に真面目な顔するから。
アルヴィンは本気で僕が好き、…知っていたけど、改めて言われると恥ずかしい。

「移り気なお前に其処まで好かれるとは、ますます気になるな」

金髪の美女と目が合うと、美女は何と涎を垂らして舌舐めずりをした。
その綺麗な顔に似合わない、何とも豪快な舌舐めずり。
食いしん坊さんなんだろうか、大人のお姉さんなのに、何だか小さな子供みたいで可愛いと思ってしまう。
その食欲の矛先が僕なんだと思うと、若干の恐怖も有るけど。

「ジュード、と言ったか。私にも食べさせてくれ」
「駄目だ」
「お前には訊いていない。どうだ、ジュード?」
「え…、と」
「駄目だよな、ジュード」
「黙って、アル。私達はこの子の意思が聞きたいのよ」

食べるってつまり、僕がアルヴィンにされてる事をこの2人にもされるって事だよね。
後ろから抱き締められて、襟を肌蹴られて、首筋を舐められて、噛まれて、吸われる。
…わ、考えただけで何か変。

「…貴方この子に何してるの?」
「あ?」
「反応が変よ。おかしな食べ方してるんでしょ」
「プレザ、首筋に噛み痕が有る。此処から食べている様だな」
「え、首から吸うものじゃ無いの?」
「それは死ぬまで吸う時くらいだ。騙されているぞ、君は」

金髪の美女の指がちょっと襟を広げて、アルヴィンが付けた噛み痕をなぞる。
その感覚にぞくりとしたけど、何か聞き捨てならない事を言われた様な。
僕は毎回首からアルヴィンに血を与えているけど、それって普通じゃ無いの?
いや、そもそも吸血鬼に定期的に血を与える事は普通では無いが。
アルヴィンに視線を遣ると、少しばつの悪そうな顔が有った。

「…だってなぁ。言い出したのジュード君じゃんか」

初めて逢った時、首筋から吸うのかと訊いたのは確かに僕だ。
吸血鬼っていうイメージがそうだったから。
でも、違うなら違うと言ってくれれば良かったのに。

「でも、血流とか関係有ったりするの?太い血管の方が吸い易いとか」
「別に無いわ。何処からだって良いのよ。例えば指先からでもね」

プレザと呼ばれた眼鏡の美女は、そう言いながら僕の手を取った。
眼鏡越しの瞳がやけに妖艶で、その瞳を向けられている事が何だか恥ずかしくて、僕はつい目を逸らしてしまう。
くす、と小さい笑いが聞こえて、ますます羞恥を増長させる。

「本当にかわいいのね。…欲しいわ」
「やんねぇよ」
「やる気か、アルヴィン」
「やる気なのはおたくらだろ。…譲る気も負ける気も無いけどな」
「ちょ、ちょっとアルヴィン…!」

アルヴィンの腕に痛いくらいの力で抱き締められて、かなり苦しい。
密着した事で表情は見えなくなったけど、声に怒気が含まれてるのが嫌でも解る。
これって、やきもち?
…やきもちなんて可愛い言い方には当てはまらないかも知れない、何て言うか殺気みたいなものを感じるし。
それでも、この怒気の根底に有るのは僕への好意だろうし、つまりは独占欲。
となるとやっぱりやきもち、だ。

「……っ…」
「…?嬉しそうだな、ジュード」
「え、あ…の、」
「かわいいな。私はお前のその顔が好きだ」
「…!」

金髪美女の迫力の笑顔が直ぐ其所に。
アルヴィンとプレザが言い争っている隙に、金髪美女は僕の頬に口付けた。
ついでに、其処をぺろりと舐められる。

「ひぁ、…っ!?」
「!ミラてめぇっ」
「うむ、声もかわいいな。もっと啼かせたいぞ」
「あら、先を越されちゃったわ…。私も」
「あ…んっ」
「プレザぁぁっ!」

プレザには指先を舐められて、その瞬間、ぞわりと。
それはまさに、夜毎アルヴィンに与えられるあの感覚と同じ、快感だった。
何で舐められただけで、そう思って、アルヴィンの言葉を思い出す。
“淫魔”。
つまりこの2人はアルヴィンと同じ、唾液に催淫作用が有る吸血鬼なんだ。
男だから男に作用しないアルヴィンとは違って、女だから男に作用する唾液。
その“男”は勿論僕だって例外じゃ無くて。

「んっ、…んぅ…」

ほんの少し舐められただけなのに、下半身に血が集まるみたいな感覚がして。
まずい、かなりこれ、まずい。

「おい離せって!舐めんな!」
「?何故だ」
「気持ち良い?もっと欲しいでしょう?」
「こいつは俺のだって言ってんだろ!」

うぅ、何この状況。
女性を無下に扱う訳にはいかないけど、このままっていうのは辛過ぎる。
かと言って血を与えるのは、…何か、その、抵抗有るし。
兎に角早く楽にして欲しい、美女2人にじゃ無くて。

「…アルヴィン…っ!」

力の入らない指でアルヴィンのマントを掴んで、縋る。
更に強く抱かれたけど、それさえもう痛いとは思わないくらい、僕は熱に侵されていた。













熱を冷ますなら、貴方の手で













(ふられたな、残念だ)
(摘まみ食いも駄目なんて。独占欲強いわね)

(アルヴィン、お願い、僕…っ)
(任せろジュード、楽にしてやる!俺が!)













――――――――

琴音様リク、アルヴィンvs女吸血鬼でジュード君争奪戦です。
ミラかプレザって事だったので、折角だから両方に。
噛ませてしまうと本筋に影響するので舐めるだけに…、すみません^^;

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