約束の翡翠
綺麗な、世界
「ユーリ、手ぇ出して」
きょとんとした顔して、ユーリが俺を見る。
あ、その顔可愛い、ちょっと唐突だったかな。
どっちの手とは言わなかったけど、ユーリは左利きだから、すんなり左手が差し出される。
「ねぇ、ユーリ」
剣士とは思えない華奢な手を取って、女の子みたいな細い指を撫でて。
する、目的の指に触れた時、ユーリが目を見開いた。
「俺おっさんだし、だらしないし、ユーリには釣り合わない。解ってるけどね」
羽織の袖から、ベルベットの小さな箱を取り出す。
ベタベタなシチュエーション、でもそれが解り易くて良いでしょ?
「それでもよ。俺は、ユーリが欲しい」
片手で箱を開く。
細いシルバーの真ん中に、小さな翡翠。
「ユーリの一生、俺に頂戴」
はい、オア、イエス?
蒼い空を見上げて、気持ち良いなぁなんて思う。
その感覚が何か、凄く久し振りだ。
ちょっと前までは空は蒼く無かったし、それより前は空を見上げる事もしなかったから。
それに今は、空だけじゃ無い、目に映る全てが綺麗。
何故なら今の俺は、幸せだから。
「おじさま」
「!お帰り、ジュディスちゃん」
寝転んで空を見てた俺に、ふ、と影が掛かって。
逆光で顔は見えなかったが、その独特なシルエットと妖艶な声、一瞬で解った。
名前を呼ぶとジュディスちゃんはにこりと微笑んで、俺の隣に座る。
「ええ、ただいま」
此所オルニオンに滞在中舞い込んだ魔物討伐の依頼に、凛々の明星の2人と1匹は喜び勇んで方々に駆け出して行った。
少々気弱な首領が最後に、個人作業なのかと肩を落としてとぼとぼ歩いて行ったのは3時間程前だ。
オルニオンの四方に散った3人と1匹がそれぞれ、依頼に見合うと納得する数の魔物を狩って帰って来れば依頼完了。
ジュディスちゃんはその1番手という事になる。
「無事で何よりよー、怪我は無い?玉のお肌は大丈夫?」
「ふふ、大丈夫よ。ほら見て」
「わぉっ!眩し過ぎるわっ!」
彼女の獲物は、それはもう物凄くどす黒い血に濡れているけど、彼女自身は汗一つかいていない。
流石クリティア族、魔導器無しで戦う力を持つだけ有るわ。
…その力を戦闘に活かすクリティア族なんて、世界中捜してもジュディスちゃんしかいないんだけども。
「私が1番なのね、意外だわ」
「自分で言っちゃうの…。まぁ、少年が最初だと踏んでたから確かに意外」
「最後は私かユーリだと思っていたのだけれど。カロルも頑張っているのね」
綺麗な蒼い空と、綺麗な蒼い髪が一緒の視界に収まる。
あぁ綺麗だ、綺麗だけど。
もっともっと綺麗なものがいない、あの子は未だ、森の中。
「…ふふ、おじさま、つまらなそうよ」
「え、嘘だぁ。絶世の美女が隣にいるのに」
「目の前にいる絶世の美女より、何処ぞで暴れ回っている地上最強のライオンが好きなんでしょう?失礼な話ね」
そよぐ風に髪を揺らしながら、微笑む。
あぁ、本当にこの娘はやりづらい。
何もかも透かして見られて、俺よりも俺の心を知っているみたいで。
「…早く帰って来ないかなぁ、俺の黒獅子」
「最近のユーリは浮かれているもの、無理よ。暫く帰って来ないわね」
「なに、それ俺様の所為?」
「勿論。剣が握り難くて仕方ないって、いつもぼやいているわよ」
さらさら、
さわさわ、
気持ちの良い空の色、気持ちの良い風の感触。
気持ちの良い、世界。
全てが綺麗だと、幸せだと、思ってた。
瞬間、空気が止まった
(そよぐ風は姿を消して、)
(蒼い空を雲が覆う)
(ぴたりと、世界が)
――――――――
行き当たりばったりオウイエー。
っていうかユーリが出て無い。←
長編にはならないかも知れない、中編くらいの長さになる…?
しかし先を何も考えて無いんだぜ!
完結しない可能性絶大だぜ!←
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