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TOV短編
RaY
現パロ。

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『ア・ハッピーニューイヤー!!』


テレビから賑やかな効果音と、楽しげな歓声が聞こえる。

炬燵の天板に顎を預け、斜めに傾いた視界の中にそれを見ながら、綺麗に筋を取った蜜柑を一房口に放り込む。

甘酸っぱい。

やっぱり冬のこたつでみかんは最強だ。


「あけおめ、ユーリ」

「おう。あけおめ、おっさん」


炬燵4辺の向かい側に座ったユーリも、俺と同じ様なポーズでまったりしてる。

煩いくらい騒ぐテレビの向こうのタレント達とは対称的に、静か過ぎるくらい静か。

たまに、お茶お代わりする?ああじゃあ頼む、とか会話が有るだけで。

年が明けた瞬間も、申し訳程度に簡略化した挨拶を交わしただけ。

いくら何でも淡白過ぎるかな。


「ユーリ、おみかん食べる?」

「ん…、食う」

「じゃあはい、あーんして」

「あー」

「…あら素直…」


眠いんだろうか、半目でこっち見ながら、ぱかっと口を開けるユーリ。

そこに、さっき自分で食べたより更に綺麗な橙色の蜜柑を差し出してやる。


「ん、」

「…ちょっとぉ、誘ってんの?」

「んー、うめぇ」

「聞いて無いね」


蜜柑を摘まんだ俺の指ごと、ユーリの柔らかい唇が包む。

口の中でちょっと、歯と舌で弄られてから解放される。

ちゅぷ、なんてやらしい音がした。

指がてらてらしてて何かえっちぃ。


「ユーリ、去年1年間お世話になりました」

「おう。1年間お世話しました」

「今年も1年間宜しくお願いします」

「おう。宜しくしてやるよ」

「宜しくついでに1発ヨロシクやらない?」

「蹴るぞ」


炬燵の中で、言うより前に蹴られる。

容赦無い結構強めな蹴りが炬燵を揺らして、天板に乗った頭2つと蜜柑幾つかも揺らした。


「青年、痛いよ。あと蹴ってから言わないで」

「煩悩を払う夜に煩悩まみれの発言するからだろ。今日くらい清くいらんねぇのかよ」

「誘った癖に」

「初日の出拝む前に寝かしてやるか?」


爪先がぐりぐりと俺の足を攻撃して、さっき程じゃ無いけど地味に痛い。

本気で拒否ってるらしい、残念。

でもさ。


「“今日くらい”、で良いんだ?」


眠そうな半目がもっと薄くなって、呆れたみたいな。

その目見てると嬉しくなっちゃう、俺の考え間違って無いんだね。


「今日はまったり過ごしたい?大好きなおっさんと」

「…そーだな。今日くらいは平和に過ごしたいよ」


明日は良いって意味よねそれ、と、相変わらずぐりぐりして来る爪先を両足で捕まえる。

にんまりと笑ってやると、ユーリの手がこっちに伸びて来た。

あら何かしら、頭でも撫でてくれんのかしら。


「おっさん、みかんくれ」

「…はいよ」


掌を上にして差し出された手に、一点の曇りも無い橙色を乗せてあげた。













今日はこたつでみかんの日














(ユーリとまったり、本当は嫌いじゃ無いけど寧ろ好きだけど)
(ユーリとこってりの方がより好きな訳で)

(今日はまったりで我慢するけど)
(明日以降はこってりイくわよ!)













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正月レイユリ。
まったりのんびりおこたでみかん、そんな適当な正月も良いじゃないか。

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