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TOV短編
RaY

「近付かないで」


時折、自分がこうなる事を知ってた。

ユーリが好きで、大好きで、傍にいたいのに傍にいたく無い、そんな気持ちになる事。

ユーリは真っ直ぐな子だ。

その道が正義だろうと、悪だろうと、真っ直ぐ進むと決めたら絶対に真っ直ぐ進む子だ。


「…お願いだから、こっち来ないで」


その真っ直ぐさが愛しい筈なのに、歪みに歪みまくった俺には、それが痛くて仕方無い。

ユーリの傍に居ると自分の歪み具合がありありと解って、痛くて。

俺の傍に居るとユーリまで歪めてしまいそうで、それがもっと、痛い。

遠ざけたい、ユーリを、俺から。


「………」


背を向けた俺に、ユーリが溜め息を吐いたのが聞こえた。

ユーリは聡いから、俺が何を思ってこんな事言い出したのか、きっと解ってるんだろう。

足音がして、何も言わずに遠ざかってくれる。

それが有り難いと思うのに、やっぱり、好きだから寂しいとも感じて。

あぁ何て我儘なんだ。

そう思って、こっそりユーリの背中を窺おうと振り返る。

…と。


「!うぉっ」


いきなり背中に感じた衝撃、それはユーリが、俺の背中に背中を合わせてぶつかった為に。

離れて行った筈のユーリが何故此処に居るのか。

振り返った先に見た土埃で、ダッシュして戻って来たのだと理解した。

…え、何で。


「ユーリ、」

「おっさん知ってるか?世界で1番離れる為には、こうして背中合わせになるのが正解なんだぜ」


体重を掛けてぐいぐい背中を押して来るユーリ。

その重みと温度に、冷たい心臓が大きく脈打つ。


「…ユーリ、俺は離れてって言ったよ」

「離れてんだろ。世界で1番」

「あのね…!」


「離れてやんねぇよ」


肩にユーリの頭が乗せられて。

手が、握られる。

がっちり、力強く、離さないって言われてるみたいに。


「あんたまた下らねぇ事考えてんだろ。やめろよ、そういうの」

「下らなく無いよ…、大事な」

「下らねぇよ。オレがあんたといるのを選んだのに、あんたはそれを否定してる。それが下らなく無い訳ねぇだろ」

「!」


手、痛い。

ユーリが俺を、こんなにも歪んでる俺を選んでくれているから、痛い程繋ぎ止められている。

本当にこの子は、真っ直ぐだ。


「逃がさねぇから」


…どうしてお前さんは、そうなの。













俺の全部を容易く壊して、容易く癒す













(歪んだ俺を理解して、選んでくれたんだね)
(俺は本当に、馬鹿な奴だ)

(…有難う、ユーリ)













――――――――

…何が書きたかったのか…。←
背中合わせRaYが書きたかったんだ、単純に。

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