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TOV短編
RaY

「おじょーさん、ちょっとおいで」


背後から掛けられた声は聞き慣れたもので、警戒は特にしなかった。

ただ、おじょーさんと言われたのが不愉快で、随分きつい目付きで睨んでしまった様に思う。

睨んだ相手、おっさんが、ふざけた様子で肩を竦めたから。


「おーこわ」

「怖がらせる様に睨んでんだ、怖いのは当然だろ」

「そうね、俺が悪いね。ユーリ女顔なの気にしてるもんね」

「…、で?」

「そうそう、こっちおいで」


手招きされて、薄暗い路地に導かれる。

ダングレストを根城にして暫く、そんなオレでも知らない様な、細くて暗くて古い路地。


あ、何か嫌な予感、そう思った。













背には壁、唇には、













「ふ、は…っ、ん、」

「ん…ん、はぁ」


人っ子1人どころか猫の1匹もいない路地に、ぴちゃぴちゃくちゅくちゅ、音が響く。

後頭部をでかい手で掴まれて無理矢理下を向かされ、合わされた唇はかさかさして少し硬い。

オレの唇の外側と内側を、甘える時のラピードみたいに舐め回す舌の働きで、かさかさした感触は段々無くなって来たけど。

噛み付くみたいに乱暴に、いきなりキスして来やがった癖に、触れたところから後はやたら優しくて甘い。

うっすら目を開けたら、至近距離に有るおっさんの目と視線が合った。

にやり、とも、にこり、ともつかない…でもこれ笑顔、だよな多分。

何考えてこんな事したのか全然読めない、面倒臭い笑顔だと思った。


「…おい、…っ…押し付け、はぁ、…んな…っよ」

「や、よ。…離れ、ない、でよ。もっと…、ふ、ほら、ちゅう」

「ン…っ、こ、ゆう時…くらい、その、…おネェ言葉…やめ、ろ」

「やぁ、…よぉ。自分が、何に、犯されて…んのか、…解んなくなって…、良くない?」

「良くね…、っんン、ん」


唇を合わせながらの会話はどうにもテンポが遅くなる。

舌やら唇やら、舐められたり吸われたりするから、プラス滑舌も悪くなる。

正直おっさんの言ってる事とか何と無くしか解んねぇ、半分くらいはフィーリングだ。

多分、おっさんもオレの言葉を同じ様に感じてんだろうと思う。

そんな、伝わってんだか伝わって無いんだか解らない会話をしながら、当たるおっさんのをちょっとだけ、太股で押し上げる。

瞬間、舐め回す舌がぴくってして…、はっ、ざまぁ。


「……っ、やって、くれる、…じゃない」

「うっせ…、好き、放題、しやがっ…仕返し、だ」


ぐいぐい、ほんの少しだけ。

手では触れないし、強く押し上げる事もしない。

只太股で緩慢に、焦らすみたいに。

趣味悪ぃキス攻めに対抗するみたいに。


「…ね」

「は、…んだよ」

「お互い、このまま…、イけそ、じゃない?」

「…んな、わ…け」

「有る…よね」

「……、っ」


只キスされてるオレと、只太股で押し上げられてるおっさん。

いつももっと凄い事してんのに、何でか今は、これが物凄い刺激に思えて。

あ、やべ、と思った時にはもう遅い。


「んっ…んぁぁ、あ」

「……ッ…、は、ぁ…」


服の中で出すのは、後が気持ち悪いから嫌いなのに。

それはおっさんも同じみたいで、一応笑顔だった目が何と無く曇って見えた。

最後に唇を舌が1周して、離れて、漸く顔全体を視界に捉える。

舌舐めずりしたおっさんは何か、魔物より凶暴な生き物みたいで。


「喰われた…」

「もっと喰って良い?今度は全身余す所無く」

「…、残念だけどそれは無理だな。見ろよ」

「なん…、あら」

「ワフゥ…」


いつから居たのか、ラピードが直ぐ隣に寝そべっている。

隻眼が呆れた様にこっち見てる。

どうやら時間切れだ。

我らが首領が心配してるらしい。


「悪ぃラピード、世話掛けたな」

「ワンッ」

「カロルには内緒な?」

「ワンッ」

「おぅ、さんきゅ」

「…内緒も何も。少年にわんこの言葉は解んないでしょ」


迎えに来てくれたラピードと、オレとおっさん、2人と1匹で来た路地を引き返す。

下半身の不快な感覚が気になって、目をそこに向けた。


「…お互い上着が長めで助かったな」

「そーね」


下半身ぐっしょり濡らして大通りを歩くなんて、周囲が薄暗いのを差し引いても、大の大人が出来る事じゃ無いけど。

自分達の服装に感謝して、極力いつも通りを装って歩いた。

…いつも通り…、オレっていつもどうやって歩いてたっけな、何か自信無い。


「おっさん」

「んー?」

「アジト着いたら、喰われてやっても良い」

「まじで!?」

「凛々の明星に物凄く高度な細工技術が必要な依頼が舞い込んで来たりしたら、な」

「…ちょっと酒場行って来んね」

「ズボン気を付けろよ」

「おぅ!じゃあね!」


がに股で走り去る後ろ姿を見て、あぁオレも今がに股で歩けたらどんなに、なんて思った。

その馬鹿馬鹿しい考えに噴き出して、オレを見上げるラピードの頭を撫でる。


「ちゃんと斡旋出来たら、ご褒美やんなきゃな」

「…ワフゥ」

「はは、ごめんな。好きだからしょうがねぇんだ」

「……、ワフ」


やっぱり呆れた目をされてしまったけど。

心は、何か弾んでて。













ユニオン重鎮の底力、今こそ見せる時だぜ?













(少年少年!ちょっとおいで!)
(え、どうしたのレイヴン、来るなり)
(良いから!ほらおいで!)
(わっ、わっ、ちょっと!)

(…流石ユニオンNo.2)
(エロパワーってすげぇんだな)













――――――――

ひたすらちゅぅするレイユリが良い。
おっさんにおいでって言われたい。←

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あきゅろす。
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