TOV短編
RaY
「…おっさん、自分が情けないわ」
額には濡れタオル。
口には体温計測魔導器。
サイドチェストにはうさりんご。
何処から見ても、誰が見ても、病人以外の何者でも無い構図。
「まさかこんな事になるなんて…」
「はいはい解った解った、良いからリンゴ食え」
「だってねユーリ!俺が何の為に色々計画したと思ってんの!?」
「へいへい残念だったなぁ。ほれ」
「ユー、むぐ」
ベッドの隣に椅子を持って来て座るユーリが、リンゴを無理矢理俺の口に詰め込む。
甘酸っぱいリンゴの味が口の中に…、っていうか、体温計測魔導器口に入ってんだけど壊れないのコレ。
魔導器を噛まない様に避けながらリンゴを咀嚼する。
…まぁ美味しいけど、そうじゃ無くて。
「ユーリ、俺はね!」
「オレに風邪引かせたかったんだろ?だから寒いの苦手な癖に、わざわざ雪降ってる時に、海岸行こうとか言い出した」
「そうよ!本当なら顔真っ赤にしたユーリを俺がえろく甘く優しく看病する計画だったのに!」
「寒いの苦手なあんたとそうでも無いオレ、どっちが風邪引くかちゃんと考えるべきだったな変態親父。…と」
ピピピって電子音がして、ユーリが俺の口から魔導器を取り出す。
ちらっと見た感じ、リンゴの欠片は付いて無かった。
「…、今日は1日寝てろよ」
「え、そんな酷い?何度?」
「37.8。あんた平熱5度台だろ、実は相当きついんじゃねぇの」
「ユーリがちゅーしてくれたら一気に下がるよ」
「ちゅーなんかしたらオレが上がるよ。勘弁してくれ」
「…なにそれかわいい。体温上がった、責任取って」
伸ばした手は軽く叩き落とされた、ちょっと本気だったのに。
「タオルの交換くらいしてやるから。大人しくしてろ」
「えー、俺の計画通りえろえろ看病してよ。最終的には極太お注射で…って、駄目だ俺が下になるじゃん」
「何だ、本当は下希望か。よし解った、全快したら抱いてやる」
「…じゃあ根性でずっと風邪治さない」
「意地でも治させる」
「………」
「………」
叩き落とされた手を、不屈の精神でもう一回伸ばして。
今度は、ちょっと乱暴にだけど掴んでくれた。
タオルを絞る度水に触れるから、いつもよりずっと冷たい手。
「…早く治れよ。オレの攻デビューの為に」
「全快した俺に力技で勝てる気なの?おめでたいわね」
「はっ、言ってろ」
ぎゅうって、力を込めて握られる手。
…心配掛けて、ごめんね
(早く治すよ、ユーリの為に)
(いや勿論下は全力で遠慮するけど!)
――――――――
自分が具合悪いから具合悪いRaY。
計画失敗おっさん。
…結局YRa化したのかしら。←
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