TOV短編
RaY
TOW3設定。
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深夜の船内は静かだ。
半数程は常に仕事を受けて船を出てるし。
女子供が多いから疲れも溜まるんだろう、案外就寝が早い。
今起きてるのは俺みたいな生活不規則なおっさん組と、研究室の学者さん達と、船長さんくらいか。
「…なぁんか不気味よね…、古い船らしいしさぁ」
ゴゥンゴゥンと動力が働いてる音とか、照明がたまにパチンと鳴るとか。
昼間は騒がしくて聞こえない音がこの時間は聞こえる、何か違う場所みたい。
廊下を歩いても人の姿は殆ど見えなくて、皆自室で休んでる。
時折擦れ違うのは、遊び人の赤髪くんとか、見回り中の黒くてでかい軍人さんとか。
つまり何の色気も無い野郎共ばっかで、つまんないんだけど、寝るには早くて目が冴えてるっていうか。
「!レイヴンさん、何処へ?」
船倉にいても何だから海でも見ようと思って、甲板に向かう途中。
相も変わらず機械に陶酔してた船長に声を掛けられた。
動力に頬擦りしてたからか、ほっぺが真っ赤で何か可愛い。
…あぁいや、俺にロリコンの気はねぇわよ。
「ちょっとね。甲板行こうと思って」
「甲板ですか?…暗いですから、足元に気を付けて下さいね」
「うん、有難う」
流石に落ちやしないわよこの歳だし、なんて笑い掛けて、動力室を後にする。
上層もやっぱり人気は無い。
クエストカウンタにもリーダーの姿が無い…、美容とか体型とか気にしてるっぽいから、もう寝てるんだろうなぁ。
そんな気にする事無いと思うけどなぁ、巨乳だし。
「…、ん」
クエストカウンタを見ながらリーダーの立派なお胸に思いを馳せてたら、不意に聴こえて来た声。
声っていうか、これ、音…、いや。
「歌…?」
上から聴こえる、様な。
ホールの上っていうと…、甲板しか。
電動梯子を登って、何の明かりも無い甲板に出た。
黒い空と、黒い海と、何と無く見える陸。
それを確認する様に見渡した甲板の、手摺に、黒い影が有った。
声は、…歌は、其処から。
「…ユーリ?」
「!」
手摺に座ってた黒い影は、我等が兄貴ユーリくんだった。
海に向かって座って、控え目に歌を紡いていたユーリ。
淡い月明かりの中で見るユーリは、…こう…、まぁ、察して。
「おっさんか」
「邪魔しちゃった?続けて良いのに」
「やだよ、聴かせる様なもんじゃねぇ」
「えー、聴きたいのに」
ユーリの隣に立つと、ユーリは唄うのを止めてしまった。
元々フェロモン満々の声が唄うとか、物凄いエロスだったのに。
「何の歌?」
「さぁ。知らね」
「知らねって…、知らねぇ歌?」
「うろ覚え。ガキの頃親か誰かが唄ってたんじゃねぇかな」
「親…」
ユーリに親はいない。
物心付く前に亡くなったらしいって事しか俺は知らないけど。
物心付く前だから当然顔も覚えて無いし、ぶっちゃけ名前も知らねぇとか言ってたっけ。
そんな状態なのに、…歌、ねぇ。
「何か妬けるわ」
「は?何でだよ」
「顔も覚えて無いのに歌は覚えてるとかさぁ。何つーの、魂に刻まれてる?みたいな?」
「…詩人かよ」
「恋は人を狂わせるのよ」
「それも詩か?」
「滲み出るね、俺の詩人魂」
「はは、ばぁか」
時折強く吹く風にユーリの髪が揺れて、さらさら流れる。
綺麗で、えろくて、でも可愛くて、もう何て言うのこれ、抱き締めたい、みたいな。
「…何だよ、暑苦しい」
「ユーリ、さっきの唄ってくんない?」
「やだっつってんだろ…」
「お願い。聴きたいよ、ユーリの歌」
「……、」
暑苦しいとは言うけど、暫く甲板にいたんだろう体は結構冷たい。
こんな薄着で夜に外にいれば、冷えもするだろう。
ちょっと抵抗されたけど無視して、ぎゅぅって抱き締めたら、諦めたみたいに力が抜けた。
「…夜中だからな。あんまり声張らねぇぞ」
「うん。しっかり耳澄まして聴くね」
暗い海に、ユーリの歌が響き始める。
静かで、穏やかで、きれいで。
「…似合わないね」
「お互い様だろ」
ゆっくり、ゆったり、
君の音に酔いしれる
(ユーリ音痴じゃ無かったのね)
(それはそれでギャップ萌えってやつだけど)
(…イイ声、ね)
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船の甲板に2人きり…、しかし。
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きっとクエストに出てるんだよwww←
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