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隣国の姫君に追い詰められて幸せに押し潰されそうになっている腹心の部下を眺めつつピオニーは唇を尖らせて不機嫌さを現にした。

「我が帝国では秘める恋を美徳としている」

身分の差を知っているのならむやみに好意を押し付けるものではない、とピオニーは言う。

「あら、キムラスカでは好意は示すことによって初めて真となりますわ」

ナタリアは応えそれに、と続けた。

「公私混同していないだけマシではありませんか。陛下とのお話しは既に終わりましたわ。私、お父様に頼み込んで王位継承における銘文を変えていただきましたの」

私、初代女王になりますから夫選びくらい此処でもさせていただいてよろしいではありませんか、と言ってナタリアはピオニーから視線を外した。

「……そんなことをしても俺の腹心はなびいたりなどしないぞ」

二人に近寄っていきつつもピオニーは幼子のようにむくれる顔をやめない。
二人の間に挟まれたピオニーの腹心であるフリングスは、隣国の姫君の愛らしい姿と己の君主の苛立ちを隠さない姿を交互に見つつ心の中でため息をついた。
此処は宮殿の前であり公共の場であり、あえて言うのであればこの世界の有名人たちがくだらない言い争いをしていて良い場ではないのだ。

もう好きにしてください、と三人を何十にも囲む兵士の周りをまた囲むようにしている国民を視界にいれつつフリングスは思うのであった。

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ジェイドとかフリングスとかをナタリアに取られたらピおっさんはむくれるのではないかなと思います。

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