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「自分の気持ちを押し付ければ良いのか、あいつの思ってることを尊重すれば良いのか、分からねえよ」


何が正解なんだ、とナタリアを遠くに見据えながらふて腐れて言ったルークにその時のガイは可笑しくて噴き出しただけだった。

それが早朝の話。



午後になり、その異変に気付いたのはガイだけだった。
いやその時点ではガイだけであって朝より気付いていたルークをガイはいらだたしげに肘で突いた。


「いてえよ」

「お前さ、ほっとくつもりか」


ナタリアの方を顎でしゃくったガイにルークは眉根を寄せると鼻を鳴らして、だから分からねえって言っただろとティアやアニスたちと楽しそうに日が照り付ける暑いケセドニアの露店を歩くナタリアを視界に入れた。
一見変わった様子は見られないがよく見ていると顔の白さが普段屋内にいるための透明な白さとは違うそれであり、足も若干ふらついているようにも見える。
確実に体調不良だ。

ナタリアも自覚はしているのだろう化粧を少し濃いめにして意識して凜と歩いている様子だった。
いつだって急ぐ旅路の一行のためナタリアはアルビオールにつくまではと気を張っているようだった。
しかしアルビオールは所詮高速機動用の機体であってベッドなどもない。
具合が悪くなるのが関の山だ。


「坊ちゃんは頭が硬くていけない」

馬鹿にしたようにため息をついたガイにルークはむっとして目を向ける。
しかしガイは真剣な目をして見返してきた。

「そこはルークの気持ちもナタリアの気持ちも汲み取るところじゃない」

「じゃあどうしろってんだよ」

「決まってるだろ。ナタリアの体を一番に尊重するべきだ」


ガイに正論を言われた気分になり、ルークは面白くなさそうに唇を噛み締めた後に分かったよと呟くとナタリアの方へと足を向けた。


「仕方ねえからガイの気持ちを尊重してやる」





end
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ああ言えばこう言う。


あきゅろす。
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