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ぽろぽろと綺麗な涙を零すナタリアを見詰めてギンジはなんて自分の心を引き付ける人なのだろうかと思った。
涙が勿体なく感じて、どうにかとめることが出来ないだろうかと考えを巡らせる。

ギンジの服を掴んで放さないナタリアの手をそのままにギンジは彼女の身体を引き寄せて抱きしめた。


「何を泣くことがあるんですか」

ギンジが想いをそのまま言葉に乗せるとナタリアは声を殺してひくっと喉を鳴らす。

「貴方の傍にずっといたいのです」


悲痛な声に彼女が辛くて仕方がないのだということが伝わってくる。

ギンジは幼子をあやすようにゆっくりとナタリアの背中を撫で、抱き着いてくる彼女に愛しさで目を細めて微笑んだ。
鼻を擽る彼女の甘い香りにそっと顔を傾けてギンジは彼女の耳に唇を寄せる。


「おいらは貴女方上流階級者のことは理解できないけど、無力ではないんですよ」

「……なん、ですの」

「王族の貴女を嫁がせる事が出来る所なんて少なくて、だからと言ってルークさんはティアさんを選んでしまっているじゃないですか」


――涙が止まった。
ナタリアは不思議そうな顔をしてギンジの眼を覗き込んできて言葉を促す。
腕の中で動く彼女にくすぐったくなりながら笑みを深めてギンジも首を傾げてみせた。


「マルクトとの和平の象徴に使われることを陛下は好んでないですよね」

「はい。それはまあ、お父様の個人的な思いかららしいですが」

「じゃあキムラスカの陰として生きなければならない貴女を掠ったら陛下は喜んでくださるでしょう」


さらりと言ったギンジにナタリアは眼を瞬かせると顔を赤く染めていった。


「ねえナタリア。貴女は視察によく出掛けられるけど、それは卓上ではなくて現場の声が知りたいからですよね」

「…………」

「現陛下のみでなくルークさんへの貴女の発言力は維持することはできますよね」

「……その、私…」

「おいらと暮らしませんか」


どのようにでも受け止めることが出来た言葉達にナタリアが何を言えば良いのか迷っていると、直ぐに逃げ道を断たれた。
顔を真っ赤にして困ったナタリアにギンジも困ったように笑う。


「きっと結婚は出来ないですけどね」

「そんなこと!」

「でもおいらも貴女の傍にずっといたいから」


ギンジはそう言ってから苦笑した。
ああ、止んだ涙がまた溢れてきてしまったと。
泣かせてしまったことに嬉しいような切ないような気持ちになって額を寄せてペリドットの瞳を覗いた。


「捨てなくて良いんです。でも全てを与えることも出来ないんです」

ふっと泣き笑いの表情をしたナタリアは膨れ面をして見返してくる。

「私は幼子の様にねだってばかりいませんわよ」

「分かってます」

「私はギンジを基点にして世界を見るようになるのです」


やっとナタリアは花のように笑ってゆっくりとギンジの胸に顔を埋めた。


「貴方の傍にいさせてください」


抱きしめる腕に力を込めてギンジは優しく囁いた。


「喜んで。ナタリア」





end

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はっきりしたことを言ったのはギンジが初めてですかね。それすら忘れてるという…。あと何て薄紅状態。
こんな二人を知っているのはノエルだけで良いです。
わたわたしたルーク達が後でノエルにさらりと教えてもらって様子を見に行ったら物凄い勢いでナタリアが皿を割って人々に爆笑されているところを目撃してギンジに色々贈り物をするようになれば良いと思います。


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あきゅろす。
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