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彼がほくそ笑むのをジェイドはあまり見たことがない。


将官などという者は無い自信を有るように見せて部下の士気を上げる道化士だ。
己の能力が見極められない自信家は退廷将官の位に立つことはない。
詰まり、必要な役割を知った者こそが各将位の称号を所有することになる。

だから、その貼付けられた自信を持った笑みや苦笑、嘲笑う顔や曲面を楽しむ人の悪そうな笑いを――彼の仕事として――見たことはある。


「貴方もそんな顔をするんですねえ」

「はあ、どのような顔をしていましたか」

フリングスは口元を撫でて可笑しかっただろうかと首を捻らせる。
ジェイドはそれにええ、と応えて笑った。

彼が見ていたのは、彼の唯一の主君であるピオニー皇帝陛下とその皇帝が溺愛しているブウサギ、そして皇帝曰ブウサギの世話係であるガイラルディア伯爵との間で楽しそうにブウサギと戯れていた隣国の王女、ナタリア姫である。

「己の所有物が己の元に戻ってくることを確信して好きに遊ばせている、といったような顔をしていましたよ」

ジェイドの言葉に瞬時に顔を赤くしたフリングスは、否定することもなく顔を片手で覆って俯いてしまった。

「……仕方ないじゃないですか」

ぼそっと呟いたフリングス。
そんな彼の姿を見ながらいやいや若いですね、とジェイドは人をからかう喜びにいつも通りの清々しさでほくそ笑んだ。





end
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フリングスさん何歳でしたか、ジェイドと同じくらいですよね。
おっさんが赤面するのだめですかフリングスさんしたら可愛いと思うんですすみません。


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