リクエスト作品
買い物に誘われるメリル


――午後、メリルは非番。


そのことを予めわかっていたうガイラルディアは、一緒に買物に出掛けないかと早朝からメリルを誘いに来ていた。


みんなが羨まし気に見詰めてくる中、メリルは首を縦に振ることを渋った。

メリル自身、ガイラルディアに恥をかかせてしまっていることに対しては申し訳なく思っている。
しかし、今までにも何度か一緒に買い物に行ったことがあるメリルは、その時のことを思い出すと悩まざるを得ないのだ。

メリルはなぜか二人きりで長時間隣を歩いていると、とても恥ずかしくなってしまい、このところは隣を歩いているガイラルディアの顔を見た記憶がないほどである。

また、ガイラルディアは毎回のようにメリルの為に着る物を沢山買ってしまう。
それにはメリルも慌てて、そんなことがまたあったらどうしようと思ってしまうのだ。


でも結局、ダメかなと問われると、いいえと答えてしまうのだけれど。






メリルは前に買っていただいた服に着替えて待ち合わせの屋敷にある庭園のベンチに丁度の時間に着いた。


しかし、その時間にガイラルディアは来ておらず、しばらく経っても現れなかった。

いくら待っても一向に姿が見えない。


時間が経つにつれてどうしたのだろうかとメリルは不安になってきた。


まさか何かあったのではないかと一旦屋敷の中へ戻ろうと顔を上げたとき、急に風が強く吹き上げた。




その時一瞬、庭の奥に人影が見えた気がした。




もしかしたら、と思いながらも普段人の入らない場所のため不審者の可能性も考えてメリルは入ってみることにした。


「誰もいませんように」


何も気にせず庭に入っていきたかったが、メリルは私服だからと少しだけ気がひけた。


「うう…失礼します」


自分が悪いことをしているみたいで、人影が見えた方へと早足にかけていく。

メイド服よりも短いスカートだから邪魔にはならない。


少し長く伸びた花をそろそろと掻き分けていくと、見知った幾分自分よりも色素の淡い髪を見つけた。



「……ぁ、」


そこには、待ち合わせをしていたガイラルディアが大きな木に寄り掛かり、地面に肩膝を立てて座り込んでいた。


使用人ながらも一瞬込み上げてきたメリルの怒りは寝息が聞こえてきたのと共に消え去っていく。


「……疲れていらっしゃったのですね」


この体勢のまま寝かすのはどうかとメリルは思ったが、下手に動かして起きてしまったら可哀相だと思い、目の前に座り込んで見守ることにした。



顔を覗き込むとまつげが長くて、鼻がスッとしているなぁとメリルは思った。


「美人……」


自分の口から出てきた言葉に驚いたが、どちらかといえば寝顔は可愛い方であると正直に思った。




なぜそうしようと思ったのかは分からない。

メリルの指先は自然にガイラルディアの頭を撫でていた。



――柔らかい髪。

うっとりと目を細めると、急に恥ずかしさが込み上げてきて、メリルはバッと手を離した。

触っても良いわけがないと自分を叱咤する。



しかし、ふと膝に置かれている手に興味を惹かれて、すすすっとガイラルディアの指を撫でつけた。


素敵な手、とメリルがなんとなしに顔を上げると目と目がかちあった。



射ぬくような視線がガイラルディアからメリルへと送られていた。


「お…起きて…」

「起きてたよ。ずっと」


メリルはハッと手に触れていたことに気付き、離そうとするが、逆にその手に腕を掴まれた。


「逃がさないよ」


ガイラルディアから低い声が漏れる。

メリルはゾクッと力が抜けるような感覚に襲われた。


「ダメじゃないか。うかつに近寄っちゃ」


メリルは恥ずかしさや、さきほどまでの不安や怒りまでも込み上げてきて瞳を潤ませた。


「泣いたらもっとダメだよ」


ガイラルディアは身をのりだしメリルの目元に舌を這わせる。


引き寄せようとするとメリルは嫌イヤと首を横に振って拒否を示した。


「起き…て、なんっ来て…れなかっ」


涙が零れそうになっているメリルを見つめながらガイラルディアは手を動かしていった。


「可愛いメリル。メリルをずっと待っていたよ」

ニコリと微笑むガイラルディアにメリルはふるりと震えた。

「でも君を見た瞬間に行きたくなくなったんだ」


メリルの太腿にゆっくりとガイラルディアの手が触れてきた。
メリルは泣いていたことを忘れ恥ずかしさで頬を染める。


「こんな裾の短いのなんで着てきたの?」


内股を撫でてくる感覚にゾクリとした。
親指が少しだけスカートの内側へと潜り込み裾を滑らす。


「ぁ…ガイラルディア様にせっかく頂いたので」


メリルが恥ずかしさで目を逸らすと、ふむっと言ってガイラルディアは考えこみ、ポンポンとメリルの頭を撫でて立ち上がった。

ガイラルディアがニコリと笑むとメリルは今度は安心して立ち上がる。


「どうやら本当に寝不足で機嫌が悪かったようだね。泣かせてしまって…ごめん」

「いいえ。そんな……」


メリルが言い終えたと同時にガイラルディアはその腕を再び掴んだ。

混乱するメリルに笑いかけ、ガイラルディアは自室へと向かっていく。


「……添い寝をたのむよ」


メリルはいつも通りの優しいガイラルディアに戻ったと元気良くはい、と返事をした。






End

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おまけ





――就寝時刻。



メリルが髪をとかしていると同室のメイドが枕を抱えて続きをそくした。


「それで?ガイラルディア様は何て言ったの?」

「泣かせてしまったことを謝りたいっておっしゃられて…」

メリルは微笑んで振り返る。

「今度、ケテルブルクに泊まりがけで買物に付き合って下さるそうです」

ピキッとメイドの表情が固まったのでメリルは焦って首を横に振る。

「でっでも大丈夫ですって気にしてませんて一度は断っ」

メリルの言葉を遮るようにメイドは礼をする。

「御愁傷様!」

「え?」

メリルはわからないという顔をするがメイドは取り合わなかった。

「そっか…そろそろ強行手段に出るとは思っていたけど」

メイドは話は終わったとばかりにブツブツとベットに潜り込んでしまう。


最後に、どこまでいったか後で教えて、と言って寝てしまった。






メリルは首を傾けるとケテルブルクだってば、と口を尖らせた。






おわり


(あまりにも昔に書いたものだったのでリクエスト用に少しだけ書き換えさせていただきました。)

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