リクエスト作品
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※ルクナタと「短」「日記文」に出てきたオリジナル兵士たちの話です。
知らないorオリジナルは無理という方がおられましたらバックをお願いします。
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簡単説明
・イグニス(♂)
・クレア(♂)
:キムラスカ軍下級兵士
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↓関連作品
(ガイナタ)
イグニスは休憩部屋で幸せを噛み締めるように、同じキムラスカ軍の兵士であるクレアに昨日の夜の事を語っていた。
「お前が西塔の上層部で見張りやってたことは分かったよ。それでどうしたんだ」
上層部、つまり夜勤でバチカル上空の見張りをイグニスはしていた。
上の見張りは常に甲冑は装備しているが、視界の確保の為、また連絡を早くするためにヘルムを外している。
欝陶しいと思いながら後ろで束ねた赤毛を風に靡かせながら警戒をしていると、下へ通じる階段がある扉を開けて、
「そこへ何と、ナタリア様が現れたんだよ」
「へー。勿論、護衛がいたんだろ」
「馬鹿、話しの腰を折るなよ。それだったら興奮なんてするものか。護衛は下の階で待たせて一人で涼みに来たらしいんだ」
やはり美人だった、とイグニスは腰に手を当てて自慢げにしたが、クレアは息を吐いただけだった。
「いいな。……俺もあの方と寝床を共にしたい」
「罰当たりな!お前は女みたいな顔をして頭ではそんなことばかりか」
「煩いな、女としても魅力的だと言ってるだけだろ。それに女みたいって言うな」
睨み合うとこほんと咳をしてイグニスは続けた。
「それでだな、その、俺の髪を褒めて下さったんだ。いつも皆ヘルムを被っているから、自分を護るためと分かっていても顔が見えないのは寂しいとも」
「へー、つくづく愛でるに値する方だな」
「で、俺は聞いたわけだ。寂しいんですかって。そしたら聡明な方は深読みしたらしく、近頃会えない人がいてそれも寂しい原因だって言うんだ」
「ふーん。うあ、お、おい」
「もう、あの方がお想いになってる人のことは分かっているが、寂しいですわ、なんて隣で言われた日にゃあ抱きしめたくもなるだろう」
甲冑でそんなことは出来なかったが、そうじゃなかったら危なかったね、と笑うとクレアは蒼白になってこちらを見ていた。
どうしたんだ、と近寄ろうとすると、いきなり肩を叩かれた。
「夜晩くに、君と、ナタリアが、何だって。もう一度始めから言ってくれないかな」
ゆっくりとイグニスは振り向くと、そこにはマルクト帝国の伯爵が微笑みながら立っていた。
「通り掛かったら面白い話しをしていたものだから立ち聞きしてしまったよ」
頼むからもう一度言ってくれないかな、と脅されたあとの記憶はない。
ただ、我等の愛すべき方がお仕置きを受けているのかと思うと謝りたくなった。
「お仕置きってなんか響きがエロいよね」
「クレア、お前は黙ってろ」
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いきなりオリジナルですみません。兵士A,Bにしたんですが、きっと理不尽にガイになじられたんだろう兵士A,Bを想うと、名前位とやってしまいました。
ナタリアに関してはガイも心が狭ければいいよ。
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「楽しい休日」(ガイナタ)
イグニスはクレアが羨ましいと思ったので正直に羨ましい、と言った。
折角の休日を一人で過ごすのも嫌だったので、夜に予定の入っているクレアと少しの間遊ぶことにした。
そのクレアの容姿から街ではよく声を掛けられ――クレア曰、本命に近付くためのきっかけに使われているらしいのだが――先ほどまでも女性たちとカフェで話しをしていた。
そして今度は街中で、クレアは後ろから抱きしめられている。
イグニスはぼけっと正面からそのクレアに絡める綺麗な手を見てて羨ましいと言ったのだった。
「大胆なお嬢さん、胸が当たって気持ち良いにはいいんですが、」
打って変わってクレアの表情は硬く、低い声で呻く。
「胸を揉むのはやめてください」
よく見ればその綺麗な手はぺたぺたと何かを確認するようにまさぐっており、イグニスは色んな意味で大胆、と思った。
クレアは嫌そうにその手首を掴んで後ろを振り返る。
「お嬢さん、俺は男ですよ」
そう言ってクレアは、なんと固まってしまった。
「まあ、やはりそうでしたの」
その聞き覚えのある声とクレアの陰から見え隠れする髪の色にイグニスも固まって瞬きを繰り返した。
ころころと笑う彼女に血の気が引く。
クレアはパッと手を離すと一歩後退り、そして彼女の涼し気な表情がイグニスの目の前に現れた。
「綺麗な顔立ちをしていたので女性だと思ったのですが何だか違ったようなので、確認してみてしまいましたわ」
クレアにそう言うとその女性はイグニスに視線を移し、全ての人を虜にするのではないかという表情をし、にっこりと笑った。
「お久しぶりですわ、イグニス」
女性、ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディアの笑みを見て、イグニスは至上の幸せを感じた。
むしろ抱きしめてしまいたたい、と思った。
この国の王の一人娘である姫君、ナタリア姫に自分だけに笑顔を向けられたのだ。
「お、ひさ、しぶりです。ナ、ナタリア様」
イグニスは完璧に自分の顔が赤くなっていることを自覚した。
自分の鼓動が相手に聞こえているかと思った。
そこに気を持ち直したらしいクレアが立ち塞がった。
「ナタリア様、私はクレアと申します。以後お見知りおきを」
姫様は視線を外すと、またクレアを真っ直ぐ見据えた。
ああ、絶対にこいつも幸せ噛み締めてるんだろうな、と思う。
「クレア。クレアは女性のような顔立ちをしていますのね」
しかし、姫の返しに目眩を起こしそうになった。
この方は心臓に悪い。
「ナタリア様。こいつは顔のことを気にしているんですよ」
下心ありありで近付いたクレアが、こめかみに青い筋を浮き彫らせたため――女みたいは禁句である――宥めようと割って入ると、ナタリアはクレアに一歩近付いてクレアの頬に手を伸ばした。
「……でも、素敵ね」
その何ともない一言がクレアには嬉しかったらしく、クレアは一瞬にして表情を和らげると頬に添えられていた手を包み込んだ。
まるで恋人たちの一時を見せ付けられているようだとイグニスは思い、また羨ましいと思う。
「顔は女みたいでも脱ぐと凄いんですよ」
「まあ、着痩せしているんですの」
「ええ、試してみますか。案外良い身体してますよ」
始まった、とイグニスは思った。
このセクハラじみたお喋りが、クレアは昼に会うものではない、と街の女性たちに云われる由縁である。
「見てみるのではなくて試すのですか」
「ええ、今でも構いませんよ」
目頭を押さえてため息を飲み込んだ。
もう、一度訴えられて捕まってしまえとイグニスはクレアを突き放したくなる。
「それは此処では試せますの」
「大胆ですね。でもそれは止めておきましょう」
「では今は無理ですわ」
「残念。それではいつでも呼んでください。そう、いつでも。もう既に身も心も貴女様の物ですからね」
「嬉しいことを言ってくれますわ」
「……ナタリア様、今晩はいかがです」
「コラ。いい加減にしろよ、お前は」
ふわりと至近距離で笑った姫に、イグニスはクレアが胸を高ならせていることを感じた。
ジョークが本気に変わり始めたので襟首を掴んでクレアを後ろへ引っ張ることにする。
クレアは夜に恋人とデートの約束がある。
それをきっとこいつは今頭の隅から飛ばしてしまっていた。
イグニスが襟を掴んだままでいたら、猫のように脱力したままクレアが流し目でこちらを見上げてきた。
「まったく。お前という存在がありながら他に移るわけがないだろ」
ジョークも通じないなんて困ったちゃんだな、とクレアは首を振って笑う。
「ちょ、気持ち悪いこと言うのやめろよお前は。何がまったく、だ。ナタリア様が本気にしたらどうするんだ」
ばっと手を放すとクレアはにやにやして照れなくても良いのよーとか何とか言ってきた。
こいつには付き合ってられん、と姫へ顔を向けると彼女は今度は輝いた瞳をこちらに向けていた。
「まあ、イグニス。貴方の髪の毛、夕焼けに映えてとても綺麗ですわ」
ふわっと姫君の香水の匂いが香って、彼女が抱きしめられるほど近くへとやってきた。
また胸が高鳴るのを感じてイグニスは戸惑った。
姫君はイグニスの、低い位置で束ねられた長い赤毛を愛おしそうに触れて空に透かす。
新たな発見をしたかのように頬を染めてうっとりとする彼女に、イグニスは胸の高鳴りも忘れて吹き出した。
こんなに可愛い人がこの国の姫様なのだと、軍に入る時に誓ったが改めて全力でこの人たちを護りたいなと思い、笑ってしまったのだ。
「でも、ナタリア様の髪の方が綺麗ですよ」
何の気無しに姫君の髪に触れると、彼女は本当ですか、と嬉しそうに笑い、そして横から痛い位に腕を掴まれた。
その時、一番始めに思ったことは先ほどまで隣にいたはずのクレアの姿がないということだった。
「ナタリア。人とのデート中に隠れて他の男に会いに行くなんて酷いじゃないか」
「あら、ガイ。やっと音機関から私の方へと意識を戻してくださったのね」
姫君がやってきた相手に笑みを見せる。
姫君とその王子様。二人で楽しげに話している間もイグニスの腕は掴まれたままで、大量の汗と共に銅像よろしく固まっていた。
「それじゃあナタリア。さっきの通りに先に行っててくれないか」
俺はこの人と少し話しがあるから、と言った姫君の恋人、ガイディオス伯爵にイグニスは自らの死を感じた。
「ガ、ガルディオス伯爵」
「何だい。そういえば君の名前を俺は知らないな」
「ではまた今度、イグニス」
「……そう。イグニス君、ね」
微笑みの天使の最後の言葉に掴まれた腕の力が一層強まり、イグニスは一人先に逃げたクレアを呪いながら意識を遠ざけていった。
End
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